イベントレポートの記事一覧
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- 2023.11.17
ベンチャー企業のイグジット戦略における「成功」とは | 池田泉州キャピタルでの講演
2023年10月27日(金)に池田泉州キャピタル主催の勉強会にて、弊社エグゼクティブディレクターの久保田朋彦が「ベンチャー企業のM&Aイグジット」をテーマに登壇いたしました。 ベンチャー企業のイグジット戦略におけるIPO至上主義への問題提起から、ベンチャー企業M&A成功の要諦まで、具体的事例とともに解説いたしました。 (久保田 朋彦/フーリハン・ローキー株式会社 エグゼクティブディレクター) サマリー ベンチャー企業のM&Aの本質はイノベーション 大企業を対象としたM&Aと、ベンチャー企業のM&Aとの違いは「イノベーション」獲得の有無。ベンチャー企業は利益が出ておらず赤字の企業も多いが、リスクを冒してでも事業会社がベンチャー企業のM&Aを検討するのは、自社にない革新的な技術やアセットを手にして、イノベーションを推進しようとするためである。 弊社がアドバイスした案件として、水処理事業大手である栗田工業が、シリコンバレーのベンチャー企業で水道管劣化予測ソフトウェアに独自の技術を有するFractaを買収したディールはその例である。栗田工業はそれまでもDX化に挑戦してきたものの、プログラミングやアルゴリズム構築といった分野の人材獲得が難しく、内製化に課題を抱えていた。栗田工業は、Fracta買収によりDX化の課題を解決し、技術革新と市場拡大を実現することが出来た。 シリコンバレーのテック企業ピクサーは、NASDAQに上場したうえで最終的にハリウッドの伝統的アニメ制作企業であるディズニーに買収された。当時ディズニーはCGを使う作品を制作する技術を有しておらず、CG技術を外部に求めた結果ピクサーが最適なパートナーだった。一方、ピクサーは資金の脆弱性の克服が課題でありディズニーの有する資金力や配給力を必要としていた。M&Aはお互いにとって最適な選択だったといえる。 IPOしたから安泰なわけではない ベンチャー企業のイグジットとして、「IPOは成功でM&Aは失敗」と考えるIPO至上主義者は未だ多いが、そのマインドセットは変えるべき。M&AもIPOも投資家の立場からすると同じイグジットのオポチュニティーで、投資を回収する意味ではどちらも成功。 多くの企業が、明確な目的や理由を持たないまま上場しているのではないか。成功したIPOの定義は「株式市場を活用できているか。もっと言えば、上場後、公募増資をしたかどうか」である。過去5年に新規上場した会社で、上場後公募増資した企業は5%くらいしかない。株式市場から資金を集める権限を持つならば、そこで集めた資金を活用して更なる成長を追い求めることが重要。 一方、低成長で資産価値に対して株式が割安と判断された企業に対してはアクティビストが介入してくる。上場したことに満足して低い株価のまま放置していると、外部からアタックされうることを意識すべきである。 M&AかIPOは、投資する前から検討すべき ベンチャー企業がM&Aを狙うには、18-24ヵ月くらいのランウェイが欲しい。資金不足で早晩にキャッシュが無くなってしまう恐れがある企業にはバリューがつかないし、そのような企業のM&Aは誰も幸せにならない。また、安定的な売上・利益を上げられる資産を有していないベンチャー企業の買収は、イノベーションを創造してきた創業者をメンバーとして迎え入れるという趣旨が強く、その創業者が辞めてしまうような買収案件は、買い手にとっても無意味な買収案件になってしまう。 投資家がベンチャー企業に対して、IPOかM&Aのどちらが適しているか、投資前より検討をする方が好ましい。IPOして自前での成長ストーリーを作れるのか、それともM&Aによりパートナーへ譲渡することで、パートナーのアセットを活用した方が良いのか、どちらが向いているのかを検討したうえで出資する方が成功率は上がる。 ベンチャー企業のM&Aを成功させる3つのポイント 1点目は、発行体経営陣とのコミュニケーション。イグジット戦略としてIPO/M&Aどちらが適しているか、投資家の立場から投資実行前から十分に検討した上で、発行体経営陣と話をすることが好ましい。M&Aの場合、買い手と事前にアライアンスを組んで共同開発等を行うなどのコミュニケーション期間を求められるケースもある。 2点目は、バリュエーションと事業計画。ベンチャー企業の事業計画はアグレッシブな内容になっていることも少なくない。起業家は事業に邁進し、どちらかというと夢を語る立場にあり、必ずしも数字やファイナンスに強くある必要はない。買収をする側は、粗探しをするのではなく、自社で出来ないことを実現している点にリスペクトをもって、歩み寄ることが大事。一方で、ベンチャー企業も、買い手とギャップを埋めるように試みることが必要で、その役割をサポート出来るのは投資家ではないか。 3点目は、ストラクチャーやインセンティブプランの設計。大企業がベンチャー企業を買収する際、買収後、創業者に一定の株式を保有してもらうようなインセンティブ設計をするケースが多い。創業者にM&A後もオーナーとしてのマインドを維持してもらうためである。買収後も継続的に事業計画が達成できたのであれば、より大きなリターンが創業者に提供される設計にすることは大事なポイント。このインセンティブを設計するにあたり、事業計画の達成度と企業のバリュエーションは不可分。そのためにも、実現可能性のある事業計画を立てるようにしたい。
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- 2023.10.05
加速する時代を生き抜くために ~資本市場で評価される企業とは | 日本化学工業協会における講演
2023年9月15日(金)に一般社団法人日本化学工業協会の理事会にて、弊社副会長兼マネージングディレクターの國重昌克が、産業革命の歴史的な技術革新の変遷とも比較の上、昨今の「全てが加速する時代」において資本市場で高く評価されている企業の経営戦略について、機関投資家の目線や、海外の優良企業の具体的事例もふまえて解説いたしました。 日本化学工業協会は、化学製品製造業者等から構成される業界団体です。代表理事の福田信夫氏(三菱ケミカルグループ 取締役)を筆頭に、日本を代表する化学工業企業の経営トップの方々が理事会に臨席する中、國重が独自のインサイトを示しました。 (國重 昌克/フーリハン・ローキー株式会社 副会長兼マネージングディレクター) サマリー ガバナビリティが届きにくい事業の見直し 今後2~3年間は、世界的に厳しい経済状況が続くと予測される。1989年に冷戦が明け、長年にわたり海外事業を拡大してきた日本企業は、海外事業を今一度レビューし、ガバナビリティが届きづらい事業はその在り方を、地域・事業の二軸で改めて見直す時期に来ているのではないか。機関投資家の中には、時価総額と子会社数の相関を見て、適正な子会社数となっているかを一つの指標として確認しているところもある。見直しが必要な事業については、他社と統合させて希薄化させたうえで一部の利益を享受する選択肢もあるが、日本企業の場合、監視コストやリスクを考えると、「思い切ってきれいに売却する」という選択肢が好ましいものと考える。 意識すべき金利の正常化 現状の世界的な金利上昇を踏まえ、資本コストを意識した経営を行うべきである。米国においてはリーマンショックやコロナ禍で超低金利が続いた時代はあったが、長期的にみれば、現在の金利水準は決して異常な高さとは言えない。企業は、金利が上がると「利払い負担を下げるため負債を減らさないといけない」という感覚に陥るが、「実は資本コストも上がっている」という点に目を向けなければならない。 ある米国優良企業は自社のWACCの水準を9.7%の目線に引き上げ、ここ十数年の低金利下で保持してきたポートフォリオの再評価を実施。真の事業ごとの実力を見極め、ノンコア事業の選別を明確化している。一方で、機関投資家は要求利回り(割引率)の引き上げに伴って、同じ収益水準を維持していても理論現在価値を以前の水準より厳しく評価するようになっている。 これらの金利上昇に伴う資本コストの上昇を意識した上で、自らの事業の収益性を評価(ROICとWACCの比較)するとともに、機関投資家の期待水準にも目を向けていただきたい。 「時代の逆風に抗える企業」とは 社歴の長い大手素材企業の株価を振り返ると、米中貿易摩擦と米国10年国債金利の過度な上昇(まさに現在行われているFRBの出口戦略の影響による現象)が顕在化した2018年2月前後をピークとして、その高値を超えられない企業が多い(下記の図を参照)。これらの企業の株価は世界的にコロナが明けるに向け一旦回復傾向にあったものの、その後も厳しい環境が続いている(下記の図を参照)。一方、2018年2月以降コロナショック直前に高値を更新できた一部の企業が存在する。これらの企業は「時代の逆風に抗える企業」であり、変化が加速する時代を見越してポートフォリオを変革するという経営上の工夫をしていたのだと思われる。 いわゆるこれらの「優良企業」を、株価(時価総額)のみならず、財務面の観点(D/EBITDA)を加味した二軸で相関させ、時系列で分析すると共通点がみられる。M&Aや設備投資等の戦略的投資によって、一時的に財務を悪化させつつも、投資家がその投資を評価し、時価総額が増大する傾向にある点(下の図参照。右から左に移動する際、左上に上昇する)である。その後、投資の効果が出始めると、徐々に財務は改善するとともに更に時価総額を上昇させる(当日は、図表を用い優良企業が示す「逆“く”の字」の特徴として説明)。つまり戦略的投資を上手く実施し、成功させることに長けている企業といえる。 これらの優良企業のうち、事業ポートフォリオを常に見直してきた独メルク社の投資例をご紹介したい。メルク社は、ヘルスケア事業等の「イノベーションそのものにより大きな収益をもたらす先行投資型の事業」(ゴールドラッシュ型)の事業割合を減らすと同時に中身も変える、一方で、研究機器・試薬やナノ材料を手掛けるライフサイエンス事業や半導体製造工程における洗浄事業の企業を買収する等、「イノベーションを支えるツール/サービスを提供する事業」(ピック&シャベル型)の事業割合を拡大することで、着実な収益基盤をも確保できる事業ポートフォリオを整えてきた。同社は創立350年超の歴史を誇る企業であるが、新たな技術への探求心を大事にする一方で、評価すべきは、これに加えて大きな時代の潮流の中で変化に負けないレジリエンスをも獲得してきたことである。 「加速する時代を生き抜く」とは 1760年代から始まった第一次産業革命から、第二次(1860年-)、第三次(1980年-)と産業革命が起こり、2025年には第四次産業革命、2045年には第五次産業革命が起こるといわれている。革命といわれる発生スパンが短くなってきており(下の図参照)、イノベーションの機会も増加している様に見える。特に、1990年以降は急激な技術革新により物事へのニーズが加速度的に変化する「全てが加速する時代」に突入しているといえる。 ビッグデータやAIによる2025年以降の第四次産業革命を迎え、企業に求められるのは、事業ポートフォリオのあるべきバランスが急速に変化する中で、これまでの経営方針や事業ポートフォリオ(過去の成功体験)にとらわれずに自己変革する力だと考える。 産業革命の変遷をみるに、産業構造の変化に柔軟に対応できる企業が持続的成長を果たし、きたるべきシンギュラリティへの対応をも可能とするであろう。目先の収益ではなく持続可能な成長を優先すべきである。 環境変化のスピードも指数関数的に加速しており、変化への対応力や柔軟な意思決定が企業に更に問われる時代が到来する。 日本には多くの創業100年企業が存在する。これらの多くは第二次産業革命の流れに乗って、第三次産業革命までの60~80年間成長を謳歌した企業でもある。一方で、1990年以降、技術革新が短いサイクルで生じ、それに伴い、イノベーションの機会も増加したが、持続性を伴うものの見極めが難しくなった。現に、この環境変化に応じて成長を遂げた創業100年企業は少ない。長年の成功体験が足枷となり、また、中国経済による牽引の恩恵もあって、環境に応じた自らの変化の必要性を感じながらも実行に移せなかったのかもしれない。だが、ダーウィンの進化論が示すように、環境に応じた変化を遂げるものが、「逆風に抗える企業」であり「加速する時代を生き抜く企業」となりうる。変化できなかったものの中には、すでに苦境に陥っている企業もある。 これらの企業が更なる100年を生き抜くためには、自社の強みを再認識したうえで、時代のトレンドをとらえ、生じているイノベーションを根底から支えるツールやサービスへの投資にこそ目を向けるべきだ。確かにイノベーション自体が増加した様に思えるが、起こりうるイノベーションそのものを率先して開発していく投資のみではリスクは高い。これらのバランスを取りながらポートフォリオを入れ替え、変化し続けることができる企業のみが持続的に成長を果たせる企業といえるのではないだろうか。
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- 2023.08.31
プライベートエクイティ(PE)ファンドと企業成長を加速する~非公開化の選択その意思決定の裏側
テクノロジーの進化や新興企業の台頭により、ビジネスを取り巻く市場環境が急激に変化する昨今。時代に合わせて変革を起こし、企業価値を最大化させていくことが経営者の方々には求められています。一方で多様なステークホルダーからの要望に応えつつ、意思決定をしていくことは困難が多いのではないでしょうか。 日本市場におけるPEの役割や非上場化といったテーマが新しいフェーズに差し掛かる中、2023年8月3日(木)に開催された対談イベントでは、弊社(HL)代表取締役CEOの野々宮律子が経済情報プラットフォーム『SPEEDA』や『NewsPicks』等を展開するユーザベースの代表取締役で今回PEと企業成長を進める決断をリードした佐久間衡氏と、TOB以降同社を支援しているカーライル・ジャパン マネージングディレクター小倉淳平氏とともに意見交換を行い、具体的事例を基に企業価値を最大化するための考え方と実際の意思決定のリアルを参加者と共有いたしました。 サマリー 以下の各コメントは、小倉氏:(O)、佐久間氏:(S)、野々宮:(N)と略 PEファンドの存在感の高まり:グローバルにおけるPE投資総額は2021年史上初の1兆ドルを超えM&A取引総額全体の2割を占めるまで至っている。直近では特に欧米での相次ぐ利上げとインフレ懸念からPEアクティビティが様子見の凪となっており、日本企業にとっては買収のチャンスのウィンドウが開いている。一方、日本においても経営のオプションの一つとしてPEファンドと積極的にコミュニケーションをする企業が増え、その存在感は高まりをみせている(N)。 非公開化の実体験を通じて:グローバル市場での拡大がさらなる成長の一手であった中で自らが非公開化の当事者となったが、結果、会社として当たり前の意思決定がシンプルに実行できるようになった(N)。PE傘下に入ったことで戦略の根本を一緒に考えてくれる人が唯一の株主になってくれた。これまで複数変数に同時対応しなくてはならなかった所、優先順位を決めて長期目線で戦略を実行できるようになった。パブリックとプライベート双方の市場の良さを使ってさらに成長していきたい(S)。 PEファンドの役割:元々ユーザベースは非常にいいビジネスを持っている。これまで株式市場で短視眼的に結果を求められていた所を1、2年という時間軸に変えて、今までの戦略をしっかりと実行してもらっている。あくまでも企業が主役で、オーナーシップをもってこのパーパスを実現してくんだと、お客さん、世の中にこういう価値を提供していくんだという明確なビジョンをもって実現に向けて真剣に取り組んでいることが重要。PEはそのギャップを埋めるためのお手伝いをテーラーメードで行い、インセンティブも付与するのが役割。PEが何かウルトラCをやるわけではない(O)。 PEファンドの選び方:担当者が重要。最終的にはその人を信頼できるかどうかにつきる(N)。全く同感。グローバルな企業経営の経験が豊富なうえに、コミュニケーションの取れる人かどうかという視点で選んだ(S)。 PEファンドが重視している点:やはりコミュニケーションが重要。バッドニュースもグッドニュースもすぐにPEへコンタクトするのが正しい付き合い方。そのためにも、上でも下でもなく対等性を意識したポジショニングをしている(O)。 HLとPEの関係:HLは欧米で1000社のPEとリレーションを持つ。PEを熟知し、PE市場とともに成長してきた。PEをカバーするチームは自らを、PE市場の「流れの中にいるのではなく、流れそのものをつくってきた」と自負。グローバルのプラクティスを日本でも取り入れ、PEとのパートナーシップで成長ビジネスをサポートし流れをつくっていきたい(N)。
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- 2023.08.18
再び注目を集めるイスラエル投資 | 駐日イスラエル大使館 経済部協力『Japan Israel Innovation Collaboration 3.0』
2023年7月11日(火)にイスラエルのスタートアップを日本企業に紹介し投資支援を行うVCが主催するセミナーにて、弊社イスラエル事務所長のIdo Zakaiと、東京事務所マネージングディレクターの郷一尚が、日本~イスラエル間の投資活動やM&Aの最新状況につき解説いたしました。 (郷 一尚/フーリハン・ローキー株式会社 マネージングディレクター) サマリー 日本企業によるイスラエル投資・M&Aの件数は、2021年は90件と過去5年間で約4倍に飛躍。取引金額は、過去にイスラエルブームといわれた2017-2019年と比して2~4倍にまで成長。特に21年はソフトバンクが10億ドル超の案件に9件参加したことに起因する。 投資の中身にも変化が見られる。2010年代半ばまでは伝統的な産業領域(ソフトウェア、IT、サイバー、半導体等)が多かったが、近年はライフサイエンス、フード/アグリテック、モビリティ、グリーン、金融など、業種も多様化。また以前は比較的アーリーなファイナンス・ラウンドへの参加が中心であったが、近年はより大型の投資や、コントロールを取るM&Aも、加速傾向にある。 このように、2000年代初頭の主にIT領域での技術シードへの少額出資が太宗を占める試行錯誤的段階から、近年では多様かつレイターな技術領域におけるより本格的なパートナーシップや人の交流、実業からの投資リターンを含むより洗練された形へと、質・量ともに変貌を遂げて来た。 その間、画期的な技術ソリューションを生み出す技術的優位性、米国等での上市/上場等を含む国際的な通用性、米国と比べた敷居や価格の低さや親日といったイスラエルの本質的な良さは変わらず、むしろ磨きが掛ってきたといえるが、一方の日本企業は、昨今の円安や国内市場の縮小、半導体や自動車といったリーディング産業でも国際的な技術競争力の低下が懸念される状況にある。 こうしたことから、技術ソーシングの観点からはイスラエル投資の魅力は益々高まっているともいえ、今後とも日本企業にとっての有力かつ有望な投資先として、一層目が離せない状況が期待されるといえよう。
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- 2023.07.21
売主にこそメリットがある表明保証保険 | M&Aフォーラム『マージャーマーケット ジャパン2023』
2023年6月29日(木)に開催された日本トップクラスのM&Aフォーラム『マージャーマーケット ジャパン2023』のパネルセッション「表明保証保険を活用したディールリスク管理」において、弊社エグゼクティブディレクターの山口絵理がマーシュジャパン株式会社シニアバイスプレジデント宍倉浩司氏、同社バイスプレジデント犬塚雅人氏とともに意見交換を行いました。 表明保証保険とは、株主譲渡契約等における売主の表明保証違反(例えば財務諸表の簿外債務など)に起因する買主が被る経済的損害を補償する保険です。網羅的な表明保証を要求する買主と保証範囲を限定したい売主の間のギャップを埋め、ディール交渉を前進させるツールとして近年活用が増えています。双方にとってWin-Winとなる保険設計ですが、利用者からは特に売主にこそメリットのある保険と評されています。 動画全編(28分)は以下よりご覧いただけます。 テーマ:クロスボーダーおよび国内M&Aの新たなトレンド/表明保証保険を活用したディールリスク管理 ~ Houlihan Lokey、Marshによるパネルディスカッション サマリー 日本のM&Aマーケットは興味深い発展トレンドが遂げている。事業承継のM&A件数は10年間で約4倍に増加。プライベートエクイティ(PE)の存在感も増し、PEが国内M&Aの買手となる件数は20年前の約6倍に迫る勢い。直近のクロスボーダーM&Aではポートフォリオの見直しから海外子会社を含む戦略的売却が加速。 これらを背景に近年売却案件において、売主が買主用の表明保証保険を主導していくことが可能な「Sell-Buy Flip」と呼ばれる手法をプロセス設計に組み込むケースが増加。表明保証保険の2段階プロセス(概算見積りと引受審査)のうち、Sell-Buy Flipでは前半の概算見積りを売主自らが行い、後半の引受審査プロセスで買主にバトンタッチをする仕組み。 表明保証保険では保険会社が概算見積りを出せないケースもあるため、まずは売却プロセスの初期段階で売手がDD対応や契約条件を見越したプロセス準備とスケジュールを管理することで、その後の契約交渉等を効果的に進められる前提を作ることができる。買手にとっても保険見積りに提示された選択肢をもとにDD及び契約交渉を進められることができ、最終的には双方にとってWin-Winとなる。 Q&Aセッション マクロ環境の不透明さの中の表明保証保険ニーズ グローバルオークションの際のSell-Buy Flipの設定 フィーについて 売手としてSell-Buy Flipに必要な準備 関連記事表明保証保険はM&Aにおけるイノベーションか?
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- 2022.06.06
【アーカイブ動画】BSテレ東の経済番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」直後に、弊社会長渡辺のインタビューが放送されました
2022年6月6日~10日、BSテレ東の経済番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」直後に、弊社会長渡辺のインタビューが放送されました。 フーリハン・ローキーとの経営統合を「戦略的売却型M&Aへの挑戦」として、その狙いや決意について語りました。
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- 2022.05.11
【出演報告】BSテレ東『マネーのまなび』に渡辺章博が出演しました
2022年3月31日放送のBSテレ東『マネーのまなび』に渡辺章博が出演しました。コロナ禍で加速する業界再編。その中でM&Aをどう捉えるか。昨年M&A案件数は過去最高を記録しましたが、その急増の理由を、元財務官僚で報道番組キャスターを務めた経歴でも知られる村尾信尚氏が弊社渡辺にインタビューしました。 ■番組名:「日経スペシャル マネーのまなび」■番組テーマ:急増!M&Aのキーパーソン直撃 M&Aに対する日本人の考え方の変化 ― 日本でM&Aがかなり増加しています。その実態はどうでしょうか。その背景には日本人のM&Aに対する考え方の変化もあるのでしょうか。 渡辺 少し前まではM&Aというとなにか特別なことでしたが、いまや中小企業の事業承継など、いろんな所でM&Aはより身近なものになってきました。日本ではこれまで売却というと非常にネガティブで、いまだに「身売り」とか「買われる」というような言い方をして、何か負け組みたいに捉えられてきました。しかし、必ずしも売るということは悪いことではない、ネガティブではない、社員にとってもお客さんにとっても社会にとっても悪いことではないという認識が徐々に広がりつつあります。その中で、日本のM&A市場が非常に活発になってきたということではないでしょうか。 村尾 おっしゃるような風土が日本に根付いてくると、M&Aがすんなり受け入れられるのでしょうね。 渡辺 結局、皆さんの賃金が上がってくるわけです。買った会社が強くなってきて、たとえばこれからインフレになりますという時に、市場シェアが高い会社は値上げすることも簡単にできます。値段を上げることが楽になればインフレだからといって社員の賃金を下げることはなく、むしろ賃金を払って優秀な人たちをどんどん集めるという好循環が生まれます。ところが規模が小さい、日本のように会社の数が多いというと、いつまでも競争するのでインフレになっても値段を上げることはできない。原材料の調達は上がってくる、政府からは賃金あげなさいではやってられないですよね。 M&Aで幸せになる優先順位 ― 企業を買収する際に難しいのは従業員の処遇といわれます。M&Aが成功するにはその優先順位が必要だといいますが。 渡辺 M&Aでは幸せになる順番が重要です。その順番を間違えるとM&Aは失敗だと言われることになってしまいます。買い手が先に幸せになろうとすると、だいたい失敗します。対象企業の人たちが最初に幸せにならないとM&Aはなかなかうまくいきません。というのは、大きな対価を払って何を手に入れたかというと、究極的には「事業」を手に入れたのであって、その事業を構成しているのはやはり人です。その買収で対象企業の社員に対価がいっているわけではありませんから、社員が自分たちにとって本当に良かったと思うまでは不安なことが多い。いろんな不安があるわけですから、まずそこをマネージしなければいけない、これがPMIです。そして、その次によかったということが実際にビジネス面で生まれないといけないわけです。今までは小さな会社だったが大きな会社と一緒になったことによって、お客さんによいものが提供できる、値段の競争で負けない、と思わせることが重要です。この順番を間違えてしまうと絶対にうまくいきません。 日本経済に求められる課題にM&Aが大きく動く可能性 ― 日本経済に求められる課題の一つであるデジタル化、グリーン化に関連したM&Aが大きく増加しそうな気がしますが、いかがでしょうか。 渡辺 コロナをきっかけに、ESGそしてデジタル化は一層重要なファクターになってきています。我々の仕事の一つにベンチャー企業の売却のお手伝いがあります。日本ではベンチャーというとIPOを第一優先する傾向がありますが、欧米ではベンチャーが大企業に買収されるというマーケットが存在します。大企業は社内でイノベーションを起こすことが難しいですし、急速にデジタル化が進むと時間が足りません。M&Aは時間を買うという効果がありますから、ベンチャー企業を買収する取り組みがこの2年間とくに欧米では活発になりましたが、日本は若干出遅れました。 日本経済の効率化のためのM&Aの活用 ― これから日本で経済の効率化、産業転換を図っていこうとしたときに、よりM&Aが活用されるようになるポイントはなんでしょうか。 渡辺 やはり、人の問題です。労働法の問題など、日本は変わっていかなければいけない課題だと思います。 最後に、村尾氏はOECD加盟諸国の時間当たりの労働生産性を取り上げ、日本が下位でありOECDの平均も下回ること、生産性の低さが日本の経済を考えるときに非常に重要なポイントであることを指摘しました。生産性が高まれば給与も上がってくる、そしてM&Aが企業の生産性を高めていくひとつの手段になれば、日本経済全体としてもいいことだと思うと締めくくりました。 「日経スペシャル マネーのまなび」についてhttps://www.bs-tvtokyo.co.jp/moneymanabi/ 渡辺が出演した放送回は「テレ東BIZ」にて有料配信されていますhttps://txbiz.tv-tokyo.co.jp/moneymanabi/vod/post_248892
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- 2022.04.06
【開催報告】「ものづくりイノベーション」セミナーにて、日立製作所の川村隆元会長に渡辺章博がお話を伺いました
2021年11月11日に開催されたJBpress主催「第4回ものづくりイノベーション」の特別対談「日立グループを再生に導いた名経営者に聞く『私の経営(者)論』」にて、日立製作所 元取締役会長の川村隆氏に、渡辺がお話を伺いました。 日立グループを再生させた川村隆氏の経営論会社変革の基本「カ・ケ・フ」の改革とは? 2008年の決算で7800億円超という巨額赤字を背負った日立グループは、2009年、日立グループ会社の会長などを歴任していた川村隆氏を執行役会長 兼 社長に迎え、改革路線にかじを切った。川村氏は当時の改革は「まさにコーポレートトランスフォーメーションの基本そのものだった」としながら、その内容は「カ・ケ・フ(=稼ぐ・削る・防ぐ)」の改革だったと振り返り、その詳細を語られました。 対談の最後、川村氏は「ポストコロナ時代の会社経営」について「旧来の資本主義を修正しようする『ただ稼ぐだけでは駄目』という声は日本国内にも出てきています。(ポストコロナ時代では)猛烈資本主義・金融資本主義的な『お金がお金を生む』動きはかなり抑えられていくでしょう。しかし、日本はコロナ以前から稼ぐ力が弱いです。社会にいろいろことを還元していく手段として稼ぐ力が非常に大事である、稼ぐことは恥ずかしいことじゃない。経営者が従業員にきちんと伝えていく必要があると思っています」とコメントしました。 これに応え渡辺は、「これから日本に求められるのは単なるCEOではなく、あえて言うならば『稼ぐ力を持った、しかも稼ぐということは悪いことじゃないというナレッジを社内に根付かせられる、CKO(Chief Knowledge Officer、最高知識責任者)』なのでしょう。そういう人たちが増えることを期待しています」と対談を締めくくりました。 M&A研究会とは 法人向け有料会員制(月5万円 税込)のフーリハン・ローキーM&A研究会(旧GCAクラブ、以下「M&A研究会」)は、M&A関連の知識、実務を広く共有していただく場の提供を目的として、2005年11月の設立以来、数多くの企業様にご愛顧いただいております。 各会員企業様毎にフーリハン・ローキーの担当者を配置し、M&A関連の各種ご相談を承っております。現在、メーカー、IT、小売、サービス等多種多様な業界のリーディング企業を中心に、多数ご入会いただいております。 フーリハン・ローキーのプロフェッショナルに加え、M&Aに関連した法務、会計、税務等の専門家や実務経験豊かな経営者などのゲストスピーカーを講師に招いて、毎月M&A研究会セミナーを開催しております。 今後の開催予定はこちら。 【お問い合せ先】M&A研究会事務局お電話(03-6212-7388)または問い合わせフォームよりご連絡ください。
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- 2022.03.03
【アーカイブ動画】BSテレ東『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』に渡辺章博がゲスト出演しました
2022年1月21日に生放送された、BSテレ東『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』に渡辺章博がゲスト出演しました。 本番組は持続可能な社会・経済を作り上げるために、日本は何ができるのか―。日本の進むべき道を考えるシリーズとして2020年3月からスタートしました。シリーズ第10弾となる今回はSDGsの実現に向けて、M&Aが積極的に活用されている事例が取り上げられました。 司会:小谷真生子氏(経済キャスター)解説:田瀬和夫氏(SDGパートナーズCEO)、松本裕子氏(日本経済新聞 ESGエディター) 番組中、渡辺は「日本ではM&Aの売却はネガティブに捉えられるが、自分の夢を実現するためには買うことも売ることも同じ」「今後SDGs視点で、世の中で共感を呼ぶビジネスのM&A、人が幸せになるM&Aがもっと増えてほしい」とコメントいたしました。「人も企業も変化に立ち向かうことで、どんどん強くなりよくなる」と解説者の田瀬氏はコメントしました。 本番組は以下よりアーカイブ配信中ですSDGsをM&Aで 成功に導く秘訣(渡辺の出演部分の抜粋です)https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/sdgs/sdgscl/post_244770 なお、番組内で紹介されたM&A事例はこちらですケーススタディ|Fractaの栗田工業への売却(当社はFractaへのアドバイザりー)https://japan.hl.com/compass/knowledge/cases/850/