Fractaの栗田工業への売却|ケーススタディ
2018.05.31
サマリー
2018年5月31日、Fracta, Inc.(”Fracta”)による栗田工業株式会社(“栗田工業”)を引受先とするSeries A資金調達、並びに創業株主らが保有するSeries Seed株式の栗田工業への譲渡により、栗田工業がFractaの持分50.1%を取得
本案件の意義
- インフラ産業におけるイノベーション
- Fractaのソフトウェアは、2050年までに100兆円以上の費用がかかると予想される米国の水道管設備更新のうち40兆円を削減できる可能性を持つ
- シリコンバレー発スタートアップ企業の資金調達
- 市場環境の変化が極めて早いシリコンバレーにおいて、Fractaは、競合他社に伍する資本とストラテジックパートナーの獲得に至る
- 日本の伝統的大企業の事業変革
- 栗田工業は、Fractaの買収により、水と環境の分野でIoT/AIを活用した新 たなデジタルビジネスの創出、拡大を図る
会社概要
Fracta(売り手)
- 水道管破裂を機械学習(AI)で予測するアルゴリズムを開発するシリコンバレーベースのスタートアップ
- 元SchaftのCFO加藤氏が同社をGoogleに売却した後、新しく創業したスタートアップ企業として著名
- Fractaのソフトウェアは、配管の長さ・素材・土壌・気象・海岸からの距離など1,000項目ものデータを組み合わせてどの配管が劣化しやすいかをAIで分析
- 北カリフォルニアの大手水道公社・スエズ社等がFractaのパイロットソフトウェアを活用
栗田工業(買い手)
- 水処理装置・水処理薬品の製造・開発を行なう東証一部上場企業で、水処理専業として国内最大手
売却のポイント
- 日本の大企業による革新的スタートアップ企業の買収/イノベーションの取り込み
- プレレベニューの会社を、日本の伝統的な大企業が買収をする、という画期的なチャレンジ
- これまでもIT系企業によるスタートアップ買収はあったが、大企業/メーカーがテクノロジ企業を買収するケースは多くなかった
- インセンティブプラン
- Put/Callオプションを入れることで、経営株主が売却後も、これまでと変わらず一生懸命仕事に取り組むようなインセンティブを最大限働かせた
- Fracta創業者の加藤さんはクロージング時点では、自分の持ち株はほとんど売却していない
- その代わりに、サイニング時に合意した事業計画に対して、一定のフォーミュラを使って、将来、栗田工業が買い取って頂く権利を保有
- M&Aイグジット=ご卒業ではない。Fractaにとっては、栗田工業のビークルを使うことで、Fractaを成長させていくんだ、というストーリー/確信を得ることが出来たからこそ成立した案件
- Fracta創業者をどのように、誰がメンターをするのか
- Fracta加藤さんの場合は、栗田工業の飯岡会長と相思相愛の関係を構築することが出来た
- M&Aのプロセスそのものにもプラスの影響がありましたし、その後2年経ってもこの信頼関係は崩れていない
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