“柳モデル”によるESG と企業価値の訴求 ~見えない価値を見える化する~
柳 良平氏 | エーザイ株式会社専務執行役 CFO / 早稲田大学大学院会計研究科客員教授 / 博士(経済学)
第194回 GCAクラブ(2021年12月開催分)ダイジェスト
今回はエーザイ(株) 専務執行役 CFO(最高財務責任者)/早稲田大学大学院会計研究科客員教授/博士(経済学)である柳良平氏による基調講演、ならびに弊社代表渡辺とのパネルディスカッションの内容を一部抜粋してお届けします。
パネルディスカッション前に「”柳モデル”によるESGと企業価値の訴求~見えない価値を見える化する~」という題目で基調講演をいただきました。「日経平均は4万円になる。日本企業の企業価値は倍増できる」という強烈なメッセージから始まった基調講演、最初に企業価値の評価指標としてのPBRからお話を頂いたのですが、米国企業は3.0-4.0x、英国企業は2.0x強、先進国平均で2.0xに対して、日本企業は1.0x強程度しかないという事実に驚きました。PBR(=財務資本)1.0xを上回る部分は、“見えない価値=知的資本・製造資本・人的資本・社会関係資本・自然資本等の非財務資本”つまりESGの価値なのに、潜在的に大きいはずの日本企業のESGの価値が、過小評価されているとのことです。
「投資家は企業に対してESGと企業価値を両立させた説明を求めており、ESG価値はPBRに織り込むべきと考えている」、これは柳氏が2007年から14年間継続されている年間200件の投資家アンケートで明らかになっている事実とのことです。ここにYDK(やればできる子)である日本企業にとっての光があり、ふんだんにある潜在的なESGの価値を定量化し、具現化し、投資家にきちんと説明することができれば、日本企業のPBRは2倍、日経平均は4万円になると力説頂きました。
後半ではエーザイにおける取り組みについてご説明を頂きました。柳氏は、「柳モデル」に基づき、エーザイのESGと企業価値の実証研究を実施し、重回帰分析によって人件費や研究開発費、女性管理職比率等のESG KPIが5-10年後に500~3,000億円の価値を創出することを証明しています。世界で初めてパーパス(企業理念)を定款に挿入し、途上国における熱帯病の治療剤の無償提供、全従業員による年間1%のhhc(企業理念であるヒューマン・ヘルスケア)へのコミット等、臨場感を持って披露頂いたそのパーパスを実践するための具体的な事例には、今後日本企業が世界でもう一度存在感を示していくためのヒントがたくさん詰まっていました。
パネルディスカッション
基調講演後に行われたパネルディスカッションでは、会場から頂いた質問を含め、弊社代表渡辺と活発な意見交換が行われました。主に取り上げたテーマは以下の通りとなります。
- 柳氏がエーザイで働き始めた経緯
- CFOとしてのメンタリティー
- 社外取締役に求められるプロフェッショナリズム
- 定款にパーパスを織り込んだことの効果
- エーザイとメガファーマの経営方針の違い
- 長期的な価値創出に必要なEmpathy
基調講演/パネルディスカッションの内容を一部抜粋してお届けしましたが、現場でないと聞けない内容や経営者/専門家とのリアルタイムでのQ&AセッションはGCAクラブの大きな魅力となっております。
ご関心ある方は、以下GCAクラブの概要ならびに今後予定されている講演についてご確認頂ければと存じます。
記事監修
この記事を監修している弊社担当者です。