今も生きる創業時の想い「For Client’s Best Interest」|渡辺章博インタビューVol.1

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GCA株式会社 代表取締役 渡辺 章博

1982年/ 米国に渡りKPMGニューヨークにてM&A業務に従事。2004年にGCAを創業。2006年に最短で上場させ、その後、欧米でM&Aブティックを次々に買収。GCAをグローバル24拠点、500人のプロフェッショナルを有する日本発のグローバルM&A助言会社に育てあげた。米国・日本公認会計士。

本場アメリカで感じた日本企業の生き残る道 – M&A

ーー GCAとしてのコンテンツメディアをスタートさせるにあたって、読者の皆様にGCAの事をより深く理解してもらいたく思います。まずGCAについてご紹介をお願いします。

渡辺 GCAはM&Aのアドバイザリーで、独立系専業であるというところが特長です。私は2004年にこの会社を創業したんですけれども、その当時はいろんな才能のある人達皆に集まってもらっていました。その前まで1人で会社をやっていた時期も長くあったんですが、1人でできることは非常に限られているということを感じていました。

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創業のときの思いというと、その当時の日本企業は、M&Aで厳しい時代を乗り切っていこうと、本当に経営者の方は皆必死でした。M&Aの仕事は結局社長の仕事なので、社長がその会社を成長させるというか、会社を改革し、トランスフォームする、そういったときにM&Aを使っていく。昔だったら、時間がたっぷりありました。今のようなグローバル競争もない高度成長期には、グリーンフィールドいわゆるオーガニックにゼロから事業を立ち上げて、1つ1つ積み上げていくことで成長できた。そういった時代もあったと思います。

けれど、今はグローバル競争があり、それから、急速なデジタル化という流れもあります。2004年当時も、まだデジタルはそんなに重視されていなかったんですけれども、すでにその兆候は出ていました。M&Aという手法を使って成長していくんだということを、本当に経営者の皆さんが真剣にやっていたんです。そのときに、私はもともと前職が会計士という立場だったので、80年代、日本の会社がどんどんアメリカにきて、それこそ松下電器がMCAという巨大エンタメ会社を買収したりとか、そういったことを会計士という立場でサポートしてきたんです。

M&Aのプロフェッショナル集団を作ると決めGCAを創業

渡辺 そのときにいつも思うことがあったんですが、いわゆる投資銀行とか、金融機関の人達が、M&Aアドバイザーと称してビジネスをやっているわけです。でも、別にM&Aアドバイザーという資格を持っているわけでもないし、特定のスキルを持っている人達とは思えない。お客様がM&Aをやるととても大きな資金需要が生まれる。お金が動くときに、銀行からしても、証券会社からしても、そこでビジネスをするチャンスというものがうまれるわけで、そのためにM&A部門を持っているわけです。

この形って、何か変だとすごく思ったんです。最初にビジネスを始めたときは、単純な思いでした。会社を買うときに、その会社の値段が高ければ高いほど、銀行さんとか証券会社さんとかは儲かる可能性が高いわけじゃないですか。でも、買い手側のアドバイザーをやっているときは、少しでも安く買収した方がお客さんのためにいいに決まっている。いい条件でM&Aすることによって、ビジネスが成長する。なのに、買い手側アドバイザーの金融機関は買収規模が大きいことで儲かる仕組みになっている。この人達はそもそも利益相反があるな、ということをすごく感じたんです。

特に日本の銀行や証券会社では、人がローテーションします。何年かM&Aをやるんだけれど、いずれは支店長になりたいとか、頭取を目指すんだ、みたいな感じでM&Aの部隊を離れていく。ところが欧米だと、そういうM&Aのアドバイザーというのは本当に職人集団で、ずっとプロフェッショナルとしてやっている人達がやっています。こういう中で私が考えたのは、日本の会社はこれからどんどん大変な状況になっていくということでした。70年代までは家電や自動車を輸出していればよかった。でも80年代に円高になってどんどん海外に行くようになったわけです。90年代以降はデジタルの世界になって競争優位性がない中で海外に出ていかなければならなくなった。自前で事業立ち上げは不可能になりM&Aは不可欠な手段になりました。いい会社を見つけて、いい条件でM&Aをするということが、日本企業の成長にとってはとても重要になったのです。であれば、そういうプロの集団をつくっていくことが、日本企業のためになるし、社会のためになる。そういうことが創業のときの思いだったんです。

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今も生きる創業時の想い「For Client’s Best Interest」

渡辺 ただし、私もM&Aをたくさんやってきましたけれど、会計士としてやってきたわけで、投資銀行に勤めていた経験もない。なので、投資銀行業界を含めていろんな人達に集まってもらって私の足りないところを補ってもらいました。気がついたら動物園みたいな会社になっていました(笑)。いろいろな才能を持っている人達に集まってもらって化学反応が起きて爆発的に成長しました。でもいつまでも勢いだけで事業をやるわけにはいかない。同じベクトルでビジネスをやってサステナブルな事業にするために経営理念が必要だと思いました。

ということで私の創業のときの思いをそのまま経営理念にしました。「For Client’s Best Interest」という経営理念です。お客さんのベストインタレスト、お客様の最善の利益のためのM&Aアドバイスをしよう、と。だから、金融で儲けるということは考えてはいけない。投資ファンド事業も一時期、手がけたのですが、クライアントである投資ファンドと競合するわけにはいかないということで、売却しました。ですから、GCAの存在意義は何ですか?というふうに聞かれたときは、For Client’s Best Interestという経営理念をもって、専業独立系としてM&Aのアドバイスをしているプロ集団です、と社員が胸を張って答えられる会社にしようと思ったのです。