ITサービス・SaaS/ソフトウェア業界 | マーケット動向レポート(2025年3月期2Q)

ビジネスサービス 

レポートサマリー

ITサービス
  • 企業・自治体のDXニーズ(クラウド・生成AI関連含む)の継続拡大を背景に、ITサービス企業全体としては前年比で増収増益傾向
  • 24年7月の日銀による金利引き上げを機に株価が下落したものの、その後回復し、日本企業全体として株価は上昇。一方で、成長期待の高いグロース銘柄は回復せず大きく下落
  • 大手・準大手SIerの市場評価(マルチプル)は比較的安定しており、EBITDAの10-11xを推移。グロース市場指数の低迷と同様に、利益が十分に出ていないグロース銘柄が多く含まれるCIer、データ分析・AI企業については、いずれも株価下落から回復しておらず、マルチプルが大幅に低下
  • 2024年前半はアクセンチュア・IBM・FPTなど大手外資系プレイヤーによる国内SIer/CIerの買収が特に多く見られ、2024年後半では、米系PEファンドによる富士ソフト争奪戦、SCSKによるネットワンシステムズ買収など、SIer/NIerの大規模な非公開化案件が多く見られた。東証による上場維持基準の厳格化・アクティビストによる株価上昇を求める圧力の高まりによって、非公開化を選択する企業が増加している

SaaS/ソフトウェア

  • SaaS企業は市場の追い風を受け、高い売上高・営業利益成長を実現したが、足元の株価下落に伴いマルチプルは低下傾向。ソフトウェア企業はSaaSほど売上高・営業利益成長率は高くないものの、マルチプル水準は微増
  • SaaS及びソフトウェア企業ともに全体として前年比で増収増益傾向。売上高成長だけでなく、収益性も重視されるようになってきたSaaS企業は広告宣伝費・外注費等の抑制(コストコントロール)によって、営業利益率が改善され増益となる企業が多く見られた
  • 直近1年は日銀の利上げや世界情勢の変化を機に株価が下落したものの、復調し、日本企業全体として株価は上昇。ソフトウェア企業においても同様に株価が上昇した一方で、成長期待の高いSaaS企業は金利上昇等のグロース株への逆風を受け、TOPIXよりもアンダーパフォーム
  • 成長期待の差によって、SaaS・ソフトウェア企業間にはマルチプル水準の乖離が存在するも、足元の SaaS企業の株価下落に伴い、EV/Salesは6.0xから4.0xの水準まで下落。SaaS企業の評価においてはトップラインの成長だけでなく、収益性・利益成長も重視される局面になりつつある
  • PEファンドによるHR SaaSを中心としたバックオフィス領域でのM&Aが盛ん。今後はPEに加え、マネーフォワード等の大手SaaS企業による買収・再編も進んでいくと予想される。売主目線としては、足元の株式市場の状況に鑑み、IPOよりも高い価格が期待できるとして、M&A Exitがさらに活発化していくと思料

記事監修

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