ITサービス・SaaS/ソフトウェア業界 | マーケット動向レポート(2025年3月期)
2025.06.24
レポートサマリー
ITサービス
- 企業・自治体のDXニーズ(クラウド・生成AI関連含む)の継続拡大を背景に、ITサービス企業全体としては前年比で増収増益傾向
- 金利上昇、関税リスク等のマクロ環境要因による株価下落局面があった中で、現在は多くの企業が株価を持ち直す傾向にあるものの、スモールキャップ銘柄や、AI・クラウド関連の新興銘柄は、高い売上成長にも関わらず株価回復に苦戦
- 大手・準大手SIerの市場評価は比較的安定しており、EBITDAは10-11xで推移。一方、グロース銘柄が多く含まれるCIerは、高い売上成長にも関わらず株価は下落局面から回復しておらず、市場では新興銘柄への利益率重視の評価姿勢が一層強まっている
- 2025年1月以降は、Dirbato/AMBLやSHIFT/ライズといった、川上・川下間での相互補完を目的とした動きが見られる。東証による上場維持基準の厳格化やアクティビストの圧力を背景に、非公開化を選択する企業の増加傾向は今後も継続する可能性が高いと資料
SaaS/従来型ソフトウェア
- 大手SaaS・従来型ソフトウェア企業群は、堅調な売上成長とともに、収益性の改善が進展。価格改定や契約社数の増加が増収に寄与し、広告宣伝費や外注費の抑制により営業利益率が向上。全体として、コスト効率を重視する経営へのシフトが見られる
- 直近1年は金利引き上げや地政学リスクを背景に株価の下押し局面も見られたが、中堅SaaS企業がTOPIX比でアンダーパフォームする中、大手SaaS・従来型ソフトウェア企業はいずれもTOPIXを上回る回復を示し、投資家からの相対的評価の強さがうかがえる
- SaaS企業は市場環境の追い風を受け、売上・営業利益ともに高い成長を記録。一方、従来型ソフトウェア企業は成長率、マルチプル水準こそSaaSに劣るものの、マルチプルは安定的に推移
- SaaS市場では、一定規模到達後は機関投資家の投資対象となり、足元の収益性と比較しトップラインの成長性が重視される傾向。企業規模がバリュエーションに影響を与えうる状況下において、単一プロダクトでの成長からマルチプロダクト化戦略での規模拡大が進んでいる。一方、急成長が見込みづらい従来型ソフトウェア市場では、足元の収益性がバリュエーションの決定要因となる
- 2025年1月以降は、国内SaaS/BPaaS市場において、PEファンドによる非公開化と事業会社による周辺領域の取り込みが並行して進展。プロダクト補完、事業拡張、再成長を狙った戦略的買収が多くみられる
記事監修
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