「統合して何が変わった?何が変わってない?」~フーリハン・ローキー×GCA 経営統合1周年記念企画(第4回)

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米国のグローバルM&Aアドバイザリー会社フーリハン・ローキー(HL)との経営統合を受けて、昨年2月22日に社名を変更して1周年を迎えました。統合から1年が経った現在のM&Aアドバイザーの思いを全5回シリーズでお届けしています。4回目となる今回は、新卒で旧GCAに入社した次世代を担うプロフェッショナル、ディレクターの和島功樹、平川俊輔、石川奈々江の3人が入社当時の様子や統合による変化などを語り合います。

「入社当時のGCAは業界の新興勢力。いろんな意味でチャレンジングでした」

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(和島)

――まず、旧GCAに入社された経緯をお教えください。

和島 私は2010年4月に新卒第1期生として旧GCAに入社しました。就職活動では金融業界を中心に採用試験を受けていましたが、GCAが新卒採用を始めると知り、興味本位で面接を受けることにしました。ところが話を聞いてみると経営理念には共感できたし、面接官の人柄も素晴らしかった。それで入社を決めました。GCAは創業してまだ5年の会社で、投資銀行が先導していた業界の新興勢力でしたし、欧米流M&Aのプラクティスを日本に定着させるための勝負をしている段階でしたから、入社メンバーは、それに参画したいという気持ちが強かったと思います。

平川 同じく2010年の新卒第1期生です。就職活動はM&Aができる金融機関に焦点を絞っていて、GCAにも興味があったのですが、当時は新卒採用をしていなかったのです。ですから、新卒採用を始めると聞いたときには迷わず応募。いつか中途採用でも入りたいと思っていた会社ですから、新卒で入れてラッキーでした。

石川 私は2011年入社の新卒2期生です。理工学部出身ですが実家が自営業をやっていたため、経営に興味がありました。その中でもM&Aは経営の最も重大な意思決定をする局面ですから、M&Aアドバイザーという職種にとても興味がありました。就職活動では同業他社含め多くの会社の面接を受けましたが、GCAの方々は会社説明会でも面接でも「M&Aの仕事がいかに面白いか」を熱く語っていて、最終的にはその熱意に惹かれてGCAを選びました。

「統合によって働き方や意識が変わった。新しいことへの挑戦は楽しいです」

――HLとの経営統合についてお伺いします。統合についてはいつお知りになり、どのように感じられましたか?

平川 正式に発表されたときにはショックを受けましたが、買われる側はなかなか体験できませんから「この経験は絶対にアドバイスに活かせるぞ」と前向きに考えようと思いました。

石川 渡辺前社長と営業活動をしていた当時、「日本企業はグローバル戦略を買い手側として検討することがほとんどだが、実は売り手側になるのも有効なオプションだ」 と聞かされていました。グローバル企業の傘下に入ることでグローバル経営のノウハウを学ぶことができるとよく仰っていましたから、ニュースを聞いてまず頭に浮かんだのは「渡辺さんはついに自分でやることにしたんだ」ということでした。そして、その渦中に自分も身を置けるというワクワク感でいっぱいでした。

和島 私もショックよりは期待感のほうが大きかった。最初はHLをあまり知らなかったのですが、知れば知るほどすごい会社だと思いました。

――経営統合から1年、お仕事に変化はありましたか?統合効果を感じるような場面はありますか?

平川 実務に変化はありませんが、欧米とのコミュニケーションは一気に密になりました。旧GCAの日米欧オペレーションは3極体制が基本。それぞれが独立していて一部を連携する程度でしたが、今は海外から頻繁に連絡が来ます。また、体系的にHLのグローバルなベタープラクティスを導入できるという点が、一番大きな変化かもしれません。無駄が減って効率化しているという実感はあります。

和島 HLはきちんとした戦略に基づいて成長を続けている会社。そことの統合によってフィールドがいきなり広がり、視野も広くなりました。

石川 今はシステム統合も進められています。旧GCAのシステムがHLのプラットフォームに完全に統合されれば、これまで以上にグローバル情報にアクセスしやすくなりますし、グローバルでのワンチーム感もいっそう深化すると思います。

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(石川)

――グローバル市場では買い手側代理人になることが多かった旧GCAと売り手側に立つことが多い米HL。その違いとこれから日本チームが目指すべき立ち位置についてよく議論されていますが、それについてはどう思いますか?

石川 その違いはM&A市場の性質の違いに起因していると思います。そして、私は必ずしも日本チームのやり方を急に変えるべきとは思わず、日本市場にフィットする立ち位置を模索していけばいいのではと思っています。

和島 個人的には、問題が顕在化してから悩めばいいと思っています。M&A市場はすごく大きい。売り手側・買い手側のコンフリクトで悩む場面が生じるのなら、それこそハッピーな状況でしょう。

平川 市場のニーズに応えることが私たちの仕事。HL自体も、今まさに日本市場やアジア市場の傾向などを分析しているところではないでしょうか。

「統合効果を最大化するのは自分たち自身。これからの数年間が勝負だと思っています」

Hirakawa P1480730

(平川)

――今後、どのように変わっていくと思いますか?もしくは、どのように変わることを期待していますか?

平川 海外拠点との連携や協業が増えるでしょうし、増えなければいけないと思っています。案件が発生してからだけではなく、交流機会も増えたほうがいい。皆が当然のように国境を超えて行き来し、価値のある情報を持ち帰って自国のクライアントに紹介するといった動きが活発化することが統合効果最大化の正しい形のような気がしています。

和島 サービスラインを増やす動きも活発化するでしょうね。米国ではすでにブランドとなっているHLのファンドポートフォリオや訴訟のバリュエーション、海外投資家を日本に呼び込むためのリーチなど、まだ日本にないサービスは、今後の日本経済に好影響を及ぼせる可能性があると思います。
HLとの経営統合によって旧GCAが掲げていた「日本発」の看板は外れましたが、M&Aに特化したグローバルなアドバイザリー会社であることは変わらず、かつ、これほどの規模のグローバルプラットフォームを有するM&A会社として日本唯一の存在です。そのユニークなポジションの価値をいかに最大化するか。まだまだ大きな伸びしろがあると思います。

平川 過渡期にある日本のM&A市場では、日本企業が買収側になるだけでなく、積極的に海外の資本やノウハウを受け入れるようになることが求められていると思います。HLとしても、そのような提案を行えるケイパビリティが強化されたと感じます。
今回の経営統合は、第二の創業のようなもの。トップを走る先輩たちから襷を受ける次の世代、そして我々世代が変化を促せなければ、もう変化のチャンスは来ないと思っています。新しいブランドの下で、我々の価値を再び日本のM&A市場にアピールしていける状況になったのですから、ここから5年ほどでしっかりと我々の市場でのポジションを確立する必要があると感じています。

和島 HLはグローバルをシームレスに機能させる仕組みが整っている、真のグローバルM&Aファームです。統合による新体制はまさに新たなスタート地点ですし、グローバルなプラットフォームで働けるワクワク感もあります。それによってお客様にも新しい価値を提供していけることが、ものすごくハッピー。私自身は、これからもこの状況変化を楽しんでいきたいと思います。

平川 自分にとって、M&A業界の楽しさはこれからも変わらないと思います。説得したり調整したりの苦労を重ねて、でも最終的にM&Aが成立すれば、それは売り手も買い手もハッピーだということ。それがこの仕事の根本的な魅力ですし、楽しさです。これからは、HLの一員として市場に新しい提案をしていける存在になっていきたい。まだ日本国内でそれほど認知されていないブランドですから、新しいことにどんどん挑戦していけると思っています。

――今日は産休中の石川さんにもご参加いただきました。4月から復帰とのことですが、不安などはありますか?

石川 もちろん復帰への不安はあります。とはいえ、業務内容そのものは統合前から変わりませんし、古くからのメンバーも居ますから、復帰して育児もこなすイメージはあります。統合によっていきなり仕事のやり方の大幅な変更を迫られたりしていたら、復帰は叶わなかったかもしれません。システムの一部が変更になったと聞いていますが、その程度の変更は何の問題もないです。

平川:会社として激動の1年、プライベートでも激動の1年。

石川 面白い状況でしたね。この会社じゃなかったら耐えられなかったかも。会社とプライベートの変革時期が重なるなんて、なかなか体験できません。本当に大変なのは育児と仕事を両立させるこれからだと認識していますが、こなせると思えるのはこの会社だからこそです。

和島 会社には社員のプライベートの充実を応援してほしいと常々思っています。そういう意味で石川さんはパイオニアであり女性スタッフの希望になる。業務が属人的なプロフェッショナル集団の会社は産休や育休が取りにくい印象がありますが、体制構築のためにも、石川さんの頑張りには期待しています。

Baby final

【話し手】
フーリハン・ローキー株式会社ディレクター 和島 功樹
2010年にGCAに入社。インダストリアル・カバレッジ担当として、エネルギー、エンジアリング、重電業界を専門とする。多くの国内外における買収・売却案件および統合案件を担当。東京大学工学部物理工学科卒、東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了。

フーリハン・ローキー株式会社ディレクター 平川 俊輔
2010年にGCAに入社。コンシューマー・カバレッジ担当として、食品、流通、一般消費財業界を専門とする。多くのクロスボーダー案件および国内案件を担当。2014年にインド(ムンバイ)オフィスに駐在。一橋大学経済学部卒、一橋大学大学院 商学研究科経営学修士課程修了。

フーリハン・ローキー株式会社ディレクター 石川 奈々江
2011年にGCAに入社。ヘルスケア/ライフサイエンス・カバレッジ担当として、医療機器、診断・研究用ツール、ヘルスケアIT、製薬関連サービス業界を専門とする。多くのクロスボーダー案件および国内案件を担当。早稲田大学先進理工学部卒。