起業家精神を備える投資プロフェッショナル集団

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ユニゾン・キャピタル株式会社 代表取締役 川﨑 達生

創業メンバー。ユニゾン・キャピタル株式会社代表取締役。コンシューマー関連ビジネス、B2Bサービス等、幅広い分野への投資経験を有する。以前は、ゴールドマン・サックス証券、マッキンゼーを経て、米国にてベンチャー企業の立ち上げに従事。

「ユニゾン流」で走るプロ集団

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ーー 川﨑様の自己紹介ならびにユニゾン・キャピタル設立の経緯をお聞かせください。

川﨑  個人的なきっかけは、大学卒業後ゴールドマンサックスで働いていた当時、上司に江原、同僚に林がいて、彼らとファンド構想を一緒に考えたことで、1998年の10月のユニゾン・キャピタルの設立に繋がりました。設立当時、自分はまだサンフランシスコに住んでいたこともあり暫くは行ったり来たりをしていましたが、設立翌年にお金も無事集まり、1号ファンドが発足しました。今は東京で仕事をしています。

ーー ユニゾン・キャピタルの社名の由来をお教えいただけますか。

川﨑 江原が元々とても音楽が好きなのですが、音楽では旋律を同じように奏でるユニゾンという言葉があり、これを会社の名前にしました。ロゴはその調律に使う道具の形にアイディアを得ています。

ーー 御社の理念や価値観で大事にされていることをお教えいただけますか。

川﨑 社内には「ユニゾン流」という言葉があり、それにはいくつかの要素があります。1つ目は我々自身が起業家であること。2つ目は、我々がやることはある種プロデューサー業であり、リーダーシップを発揮し、自分だけでなく周囲をしっかりと巻き込み投資業を進めていくということ。そして3つ目は我々の周囲、社会、またはビジネスコミュニティとも言えますが、こういったところに我々の活動を通じた還元ができるようにすること。それを最近の言葉で言えば、ESGということになりますが、設立当初からそういった意識は強く持っておりました。

ユニゾンらしさを表すもので、ガイディングプリンシパルというのもあります。これは会社によっては社訓など色々な言い方がされると思いますが、我々にはそれに相当するものをガイディングプリンシパルと呼んでおり、その中には今申し上げたような3つのポイント、それに加え、例えば、長期の利益を追求するために正しい活動をしようとか、マナーとは何なのか等が列挙されています。

ーー ファンドの概要についてお教えください。

川﨑 ユニゾン全体でいうと、今までで5,000億円弱の資金を集めております。投資チームは東京に30名程、韓国とシンガポールにも拠点があり、フルタイム、パートタイム含めマネジメントアドバイザーの方々を含めていくと総勢100名程度の規模になっています。ファンドの規模感としては、今届け出をしている4号ファンドが700億円で、5号ファンドがまだレイズ中ですが、800億円をターゲットにファンドの組成をしているところです。

フォーカス分野で蓄積したノウハウを駆使した、連続性を意識したロールアップ戦略

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ーー 貴社は独立系の老舗で、業歴も長く、その間PEを取り巻く環境も色々変化があったかと思います。昨今のPEを取り巻く環境についてはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

川﨑 環境としては、どちらかといえば可能性は広がっていると思います。それは資金調達面もそうですし、投資機会もそうです。ファンドですからある種のリサイクルを続けるわけですけれども、投資をした後でそれがリターンに繋がる形でのエグジットをするという、お金がぐるぐる回っている状況というのを見ると、総じて前向きな状況だなと思っています。2020年の前半はコロナにより、またリーマンショックみたいなことが起きるのかなという、方向感が見えない感じはしましたけども、1年半経ってみて、実際には活動レベルがしばらく停滞した時期は1~2ヵ月ありましたが、結果から言えば案件は動いています。もちろん大変な業態はありますが、実際の経済活動がそれほどダメージを受けていないようにも見えます。

ーー 貴社は様々なタイプの投資を数多く手がけられていますが、ここ数年は特にコンシューマーやヘルスケア領域等、セクターフォーカスを意識された投資を実行されていると理解しております。セクターナレッジやセクターフォーカスへの考え方をお教えいただけますか。

川﨑 創業以来、1号、2号、3号ファンドという過程の中で、だんだんと「我々はこういうのは上手くやれる組織だな」とか「得意なものはこうだな」など、形が徐々に出来上がってきた認識があります。その上で、今の4号ファンドから5号ファンドに移る過程においては、特にヘルスケアのサービス関連並びに製薬業を中心としたプロバイダーを一つの塊として、我々の集中している分野としています。それから、1号ファンド以来、コンシューマーサービス、消費財分野に投資をしてきており、今後も継続して集中していく領域となります。それから、業種というよりは業態になりますが、B to Bのサービス領域というのは現在注力している分野です。この3つを我々は「プラクティス」と呼んで柱としていますが、これらの領域において様々な知見を蓄積し、マネジメント人材等のエコシステムを集めています。

ーー セクターフォーカスをしていく中でそれぞれのセクターで成功した事案をご紹介いただけますか。

川﨑 ヘルスケアで大きな成功事例となったのは、あゆみ製薬です。もともとは昭和薬品化工という会社で、いくつかのファンドがオーナーになった時期を経て、我々が株主になったタイミングでかなり本格的な組織改正をしました。追加買収を実施するなど様々な打ち手を講じ、最終的な形としてエグジットを迎え、比較的大きなリターンを得ることができました。この案件を起点にして、製薬関連事業のエコシステムを作っていき、元々の案件から次に繋げるというスタイルの典型例になり、その他の投資にも繋がってきています。また、ヘルスケアのサービス領域ではCHCP(株式会社地域ヘルスケア連携基盤)という形で、ユニゾンのGPのチームを別ブランド化しています。このチームには業界のプロがいて、医師、薬剤師、看護師の方々と事業的な観点で話し合いをし、我々と一緒に事業を改善するプラットフォーム作りをしています。このプラットフォームを通じてさらに次のソーシングに繋げるといったことを進めています。例えば調剤薬局だと、1店舗あるいは10店舗、15店舗と展開なさっている薬剤師のオーナー経営者が多くいます。そういった方々には事業承継のニーズがあり、今後につなげるための施策策定の依頼に応じ、CHCPのプラットフォームに参画することでより大きな事業の一部になっていく、結果としてCHCPが調剤薬局をロールアップするという戦略を取っています。こういった形でスケールを発展させていくのがヘルスケア投資の特徴ですね。

コンシューマーセクターは、必ずしもそういったプラットフォームや仕組みを元に大きくするわけではないのですが、様々な経験値をつなげていくことが主眼になっています。例えば過去の投資先のCEOやCFOの方々に、別の案件で経営陣として参画頂くとかですね。そういう意味でのエコシステムの連続性は、この分野においては起きています。このような投資対象の事業分野の「プラクティス」を縦軸とすると、「イニシアチブ」が横軸となり、プラクティス間での共通軸を持ちながら連続性のある投資活動をしています。

「イニシアチブ」の一つにDXがあります。ITを駆使してデータを活用しながら、コンシューマー分野でどのように売上を伸ばしていくか、あるいはデータを使って採用のプロセスをどのように効率化していくか、更には従業員の能率やリテンションをどう高めていくかといった課題があります。そこで、ユニゾンでは全投資先に共通するアイディアをまとめて、具体的な施策作りにつなげています。データを使ってできることはたくさんありますが、各投資先単体だとなかなか規模的に取り組みにくい場合があります。そういった場合には我々がハブとなり、IT施策、データ施策を提供します。

同様に、ESGに関しても、フレームワーク化し、投資先の事業の中に組み込んでいます。色々な業種での実際成功事例を整理し投資先全体のスケールを利用して付加価値作りにつなげています。この、「プラクティス」x「イニシアチブ」の掛け合わせが、ユニゾンの工夫です。

ーー LTLファーマやCHCPなど、プラットフォームを作り、そこから投資に繋げるスタイルは貴社の特徴かと思いますが、その他にもユニークな点はございますか。

川﨑 ユニゾンというプラットフォームにおいて、若い元気な人たちが、自由な発想で活動をしているのが一つの特徴です。私たちが事業を始めた時、私は33歳か34歳で、林も年齢的に大した差はありませんでした。その我々にとってシニアな存在である江原が45、46歳くらいでした。そういう組織ですから、日本社会で考えればとても若い組織なわけです。創業から今まで参画してくれた人たちは、起業家精神旺盛で多くのアスピレーションを持ったプロフェッショナルです。残ってパートナーになった人もいれば、別の道を進みユニゾンの卒業生として活躍している方々が多くいます。この卒業生コミュニティというのは我々にとってとても大事なエコシステムだと思っています。今では卒業生が100人位いますが、そういった卒業生コミュニティとのネットワークを大事にし、できるところでは共同する、というのがユニゾンの強みです。

セクター間で起こる知見の重なりが生む相乗効果

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ーー 今後の展望、戦略で何かお考えの所をお教えください。

川﨑 当面は先ほど申し上げた3つの分野と、成功に寄与した付加価値をイニシアチブとして掛け合わせ、より深めていくというのが組織としての方向性です。我々の投資先というのは、事業としてはしっかりとした基盤があるものの、比較的規模感が小さい、売上で見れば100億~500億くらいのレンジ内の企業が中心です。組織的な成熟度や複雑さは大体想像できますし、比較的国内完結型の事業が多いです。よってユニゾンの投資活動は手触り感があり、ハンズオンの投資先支援ができるポートフォリオ作りをしています。そして、プラクティスとイニシアチブの活動から、経験値が染み出して活動が広がる、ということが起きます。例えばコンシューマーサービスだと多店舗展開している事業が多いわけですが、最近、ヘルスケアの領域で投資している訪問看護の事業は「多店舗展開」という要素が強いビジネスであるため、まさに業種を超えたテーマの重なりが出てきています。

今後は、こうした広がりの延長には海外の成長市場との繋がりを意識した取組みをしていくべきだとも思っています。

1つ目は、我々の投資先を通じた成長市場へのアクセスという観点です。投資先支援のための海外市場へのアクセス作りの仕掛けを考えていく必要があると思っています。勿論、今はコロナ禍ということなので移動の制限もありますし、それほど一気に何か起きるという状況ではないですが、徐々に移動の制限含め色々な制約が減ってくるでしょう。コンシューマー関連事業では、「ジャパンクオリティー」が支持を得るマーケットは多く、今後新たな事業機会を広げるチャンスがあると見ています。

2つ目として、インドの投資先と日本の機関投資家を繋げるコンセプトの新しい事業展開を発表しています。日本国内でのフラグシップはミッドキャップのPEファンド運営だとすると、その活動で得た我々の知見とかネットワークを活かして海外の成長分野との繋がりを作る機会は色々なところにあると思っています。今後、ユニゾンとしての新規事業を取組の中に少しずつ組み込んで行きたいと考えています。

投資先ニーズに合わせた最適な伴走スタイル

ーー ファンドと組むことに違和感を覚える会社もあると思いますが、いわゆる、ユニゾンスタイルで一緒に伴走することについて、具体的な例でご説明いただけますか?

川﨑 どの投資案件においても、最初の段階におけるプランニングに基づくガバナンス提供をするのかが肝です。例えば、組織作り。経営チームをどのようにして作り、必要な社内人材を伸ばしてゆくか、また足りないところは外部人材をどのようにスカウトしていくか、など経営チームと相談をして組織作りのフレームワークを作ります。そうして合意したフレームワークに則って、投資先の組織発展が進むように、投資開始後のガバナンスを提供するのがユニゾンの役割になります。

ただし、実際には投資先においては本社機能に関わる能力とか人材が不足している、ITの実装も遅れている、情報はあるがデータ化されていない、データはあるけれども、それを経営の情報として加工しきれていないといった課題があります。そのような場合には、その課題の切り出しができたところで我々の投資チームの人間が期間限定で改善する施策を直接サポートさせて頂くこともしますし、あるいは外部のコンサルタントの方も含めて一緒に改善策を考え、実行します。そして、最終的には会社が自立した組織として運営ができるように、会社のマネジメントチームにその役割をバトンタッチします。

常駐と聞くと、ずっといて後ろから番をしているというイメージがあるかもしれませんが、それよりは分業のイメージです。冒頭のプランニングの結果必要なものが明確となり、それについて更に我々がお手伝いできる分野がはっきりとある場合には、タスクを切り出し、常駐の形でサポートさせて頂くことがあります。とはいうものの、基本的にはマネジメントの方と組まないと物事は成り立たないので、やはり既存のマネジメントチームの方といろんなプランを策定し、それを実行頂くというのが一番の理想です。

ご質問にある、マイナスイメージは、株主が常駐するときの負の側面にあると思います。特に、親会社から送られて来た管理者が、子会社のマネジメントを管理している、ということでは、ガバナンスを基軸とした付加価値提供はできません。大事なのは、役割分担です。冒頭のプランニングの結果、必要なものが明確となり、それについて更に我々がお手伝いできる分野をはっきりさせ、ユニゾンが担うタスクを切り出し、常駐の形でサポートさせて頂くことがあります。その時には、マネジメントチームの担当の方と組んでタスク実行をして、徐々に役割を移管してゆく、ということです。

例えば共和薬品工業様です。もともと日本の企業でしたがインド企業の傘下に入り、それから親会社の事情で資本的に離れる必要が発生しました。経営チームは社長以下しっかりと独立しており、この経営チームとユニゾンがタッグを組み、当時の親会社の財務的な困難に起因した問題に対するソリューションの提供を考え提案をしました。経営チームからすると、ユニゾンと組むことで更に成長する道筋は作れるのだろうか、我々の投資家としての製薬事業に対する知見や、ネットワークを通じて補完関係が意味あるものなのか、がポイントでした。そして、深い話し合いを経て信頼関係を醸成します。最終的には、双方が合意できるしっかりした経営計画ができました。ユニゾンの役割は、計画に基づく必要な資金調達、経営チームの施策を保管する外部のリソース探し、など、事業の周辺での必要なサポートを提供する、というのが主眼です。

対局にあるのが、資さんうどんという北九州の地元志向のうどんチェーンのケースです。こちらは創業オーナーが既に亡くなっていて、経営が空洞化していました。ただ立派な事業を創られたため、40店舗の規模で利益もしっかり出ており、経営陣は、うどんを作って店で出すということに関してはとっても自信を持ってやっていました。店長以下の従業員の方々で自走できるくらいでした。しかし、そこから例えば次の5店舗、10店舗と店舗網を広げよう、そのために食材製造機能を拡張しようとしても、新しい取り組みをする組織にはなっておらず、そのままでは困難であると判断しました。そこで、社長や専務を外からスカウトし、外部のプロ経営者と中堅幹部を繋げ、初期的には様々な企画機能を我々が代行することをしました。そのために、投資開始後もユニゾンの投資チームのメンバーが一定期間、常駐で関わり、徐々に機能移管をしていった例です。

投資先のニーズによって、我々の直接的な関りが深い場合もあれば、さらっとしたものになる場合もあります。理想はさらっとしたものですね。というのはやっぱり会社は永続するし、我々の関係は永続しないので、そういう意味でもなるべく会社自体に能力を持ってもらう、そのためのお手伝いをするのが我々という考え方でやっています。

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ーー このサイトの読者の方々にメッセージをお願い致します。

川﨑 プライベートエクイティや、外部の投資家を経営の中に入れていくことは、そんなに頻繁にあることではないですし、正直申し上げて違和感が大きいものだと思います。かたや我々のような存在が、ものすごく有効に機能する場面というのが多くの企業であるとも実感しています。先ほど挙げた製薬業界に限らず、様々な業界で事業会社が難しいオペレーション状況あるいは財務状況になる、またその結果として組織の方向性自体が乱れてしまうということを経験するわけです。時間軸を考えた際には、方向性を直す作業を資本と経営が一体となって実施することが極めて有効です。そういった場面、我々のような投資ファンドと組むことが積極的に考えられるようになってきていますが、今後もこの流れは拡大していくだろうと思います。基本的にはニーズがあって、それに合致する形で市場というのは大きくなってきているということだと思います。具体的な成功例の裏側にはそれを可能にする様々な施策があるということをお伝えできればと思います。

以上

ユニゾン・キャピタル株式会社
https://www.unisoncap.com/jp/

記事監修

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