和魂洋才のプロフェッショナル集団

シリーズ記事 

カーライル・ジャパン
マネージングディレクター 小倉 淳平

UBSウォーバーグ証券会社(現UBS証券株式会社)の投資銀行本部にて、主に金融機関に対するコーポレートファイナンス業務を担当。在職中、ニューヨークオフィスの金融法人グループに所属し、米銀、資産運用会社向けアドバイザリー業務に従事。2006年にカーライル・グループに参画。現在、マネージングディレクターとして国内のTMT(テクノロジー・メディア・テレコム)関連の投資先支援業務を主導。株式会社マネースクエアHD及びAOI TYO Holdings株式会社の非常勤取締役。過去においてアルヒ株式会社、シンプレクス株式会社及びウォルブロー株式会社の非常勤取締役、チムニー株式会社及び株式会社ツバキ・ナカシマ非常勤監査役。

慶應義塾大学総合政策学部卒。

マネージングディレクター 寺阪 令司

1994年に大蔵省(現: 財務省)でキャリアをスタートし、6年間勤務。2003年より10年間カーライル・グループに在籍。2013年以降は株式会社ジャパンディスプレイ、ベルリッツコーポレーション、株式会社マレリ(旧カルソニックカンセイ株式会社)など、様々な業界で上級管理職を歴任。2020年よりカーライル・グループに復帰。現在、マネージングディレクターとして製造業・一般産業(General Industries)関連の投資先支援業務を主導。

東京大学法学部卒業/タフツ大学(フレッチャー法律外交大学院)修了/スタンフォード経営大学院修了。

マネージングディレクター 渡辺 雄介

三菱商事株式会社にて、機能性⾷品素材、ニュートラシューティカルズ、プラスチック、石油化学の事業投資、メーカー経営、ターンアラウンドに従事。

2006年にカーライルに参画。現在、日本における消費財・小売・メディア・ヘルスケア関連の投資先支援の責任者。もやしとパック野菜の製造を手掛ける名水美人ファクトリー株式会社(旧九州ジージーシー株式会社)、化粧品受託製造・研究開発大手の株式会社トキワ、サステイナブルな新世代バイオ素材を開発製造するSpiber株式会社、Supreme、Golden Goose Deluxe Brand他グローバルブランド等の支援に関与。

過去には、コバレントマテリアル株式会社(現クアーズテック株式会社)、AvanStrate株式会社、株式会社ツバキ・ナカシマ、シーバイエス株式会社(旧ディバーシー株式会社)等の支援業務に従事。現在、株式会社トキワ、Golden Goose Deluxe Brand JapanおよびSpiber株式会社の非常勤取締役。

慶應義塾⼤学経済学部卒。ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。

「新しくて面白い!」と胸を高鳴らせての参画

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(写真左から寺阪令司氏、小倉淳平氏、渡辺雄介氏)

ーー 皆さまの自己紹介と貴社に参画された経緯についてお聞かせください。

小倉 2006年に入社して以来、15年間にわたってバイアウト一筋に取り組んでいます。前職時代、ニューヨークのビジネスシーンにおいてプライベートエクイティが様々な価値を創造する姿を目の当たりにし、このような機能は日本でも必ずや求められる、ぜひ携わりたいという想いで入社しました。

寺阪 私、実はカーライルへ2度入社しています。最初は2003年から2013年まで10年間を過ごし、その後2020年に戻っています。元々は日本を良くしたいという志で公務員からキャリアをスタートしました。その後、米国へ留学した際、産業界におけるプライベートエクイティの活躍に大いなる可能性を感じ、帰国後カーライルに入社しました。2013年に事業会社に場を移して経営を学ぶ傍ら、投資先の立場から支援の在り方を考える機会を持ちました。この経験を携え、昨年より再参画しています。

渡辺 私も2006年に小倉とともに入社しました。日本企業のお手伝いに加え、グローバル企業の日本展開という観点からも色々と投資に携わっております。元々は三菱商事に在籍しファンドはハゲタカだと思っていた私は、たまたま留学中にカーライルの面接を受けることになりました。その時に、これは会社の売り買いにとどまる話ではなく、例えるなら「松岡修造」だと感じました。「錦織圭」という、島根で日本一を目指している光り輝く少年を探してきて、日本を飛び越え世界一を目指して共に取り組むということではないかと。前職で事業投資を行っていた際に抱いていた、ガバナンスの効かせ方や、海外における人材の採用や機能のさせ方についての問題意識とも相まって、新しくて面白い、日本の企業を強くするプラットフォームになるという期待と興味を持って入社しました。

資本の担い手として存在感の増すプライベートエクイティ

ーー 皆さんがこの業界に入られた時から色々と変化があったかと思いますが、昨今のプライベートエクイティを取り巻く環境について、どのように感じていますか。

小倉 かなり大きな変化を感じています。この5年程で、コングロマリット企業において、プライベートエクイティの活用が戦略オプションの1つに並べられるようになりました。黎明期から相当の時間をかけてプライベートエクイティによるバリューアップや再上場への確かな道のりを、業界としてしっかりお見せできた成果だろうと推察しています。

渡辺 帝国データバンクによると、後継者がまだ決まっていない企業が全体の65%を超えるという調査結果があり、後継者不在は喫緊の問題となっています。これを受けて、我々も事業承継の問題を解決する、もしくは親族内でのトランジションをお手伝いするといった形での関わりが増えています。また、アベノミクスのガバナンス・コードも、大企業にカーブアウトを強く促進させる要因だと感じています。さらに、我々の機能をご理解いただいている貴社のようなアドバイザリー企業や金融機関からの投資候補企業への紹介も、我々のビジネス機会増加要因の一つだと思います。

ーー 戦略オプションのひとつとしてプライベートエクイティが根付いているという話は大企業に限った話なのでしょうか?

小倉 いいえ、もっと裾野の広がりを感じています。今や毎月のようにMBOやカーブアウトが発表されていて、オーナー会社であればMBO事例をお調べになっているでしょうし、中堅企業の経営企画やCXOの方々は、カーブアウト案件についてプライベートエクイティが果たす役割や提供する価値について考察されていると思います。

オーナーシップではなくパートナーシップで企業を強く

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ーー 貴社の理念や大事にされている価値観をお教えください。

寺阪 私たちが大事に思っていることは「事業ファースト」です。もちろん投資家から預かったお金を実際に運用して、最終的にはリターンをあげなければいけませんが、これが前面に来るということではありません。あくまでも「投資先の企業の成功、あるいは成長」が、先ずありきです。その1つのエビデンスとして、上場あるいは再上場させてのエグジット実績が国内隋一ですし、上場後の株価推移も着実な成長を見せており、大変誇らしいことと自負しております。

小倉 我々は投資業ですので「オーナーシップ」を取ることになるのですが、弊社では「オーナーシップではなく、経営陣とのパートナーシップで企業を強くしていこう」というフィロソフィーがあり、これはグローバルでも日本でも共通しています。

お家芸は、日本とグローバルの「いいとこ取り」戦略

ーー 現状の運営されているファンドの概要と、チーム体制やカバーされているセクターについてご説明ください。

渡辺 2000年の日本オフィス設立以来20年の歴史を重ねており、PE業界の草分けの1社であると一社であると自負しています。世界での運用総額は33兆円(2021年9月末時点)とグローバル最大級であり、かつ日本で日本専門ファンドを持った最初の存在でもあります。

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小倉 現在、日本において最大規模となる2,580億円の円建てファンドを運営しています。これまでのコミット総額は約6000億円になります。現在投資プロフェッショナルは21名、産業別(インダストリー別)にチームを分け活動している点が大きな特徴です。お客様の事業にコミットしていく限りは、産業のインサイダーにならなければいけないと考えております。我々が手を携える経営者はまさにそのインサイダーであるため、自らプロフェッショナルとして産業の課題意識を持ち、未来を語り、彼らと志を共にしていくことが求められます。私自身はTMT(テレコム・メディア・テクノロジー)セクターを、寺阪はGIG(ジェネラルインダストリー、製造業)を、渡辺がCRH(コンシューマー・リテール・ヘルスケア)を専門に担当しております。

渡辺 我々のインダストリー制をさらに手厚いものにしてくれているのが、豊かな経営経験を有するシニアアドバイザーの存在です。例えばファイザー社の元会長やJ&Jの元グローバルコンシューマービジネスのヘッドといった強力な布陣と一丸となって、投資先事業の発展を支援しています。

ーー インダストリー区分は日本だけではなくグローバル共通でしょうか。

小倉 大きくはグローバル共通のインダストリーの軸を使って活動しています。豊富な情報や深い知見といったグローバル・リソースを日本の投資先のバリューアップに活かしていますね。

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寺阪 今やどのセクターもグローバルなしでは語れない状況にあります。例えばテクノロジートレンドは完全にアメリカ先行で、それに倣うのは重要なインサイトですし、コンシューマーやジェネラルインダストリーでも、グローバル展開の巧拙が大きなテーマとして挙げられます。日本とグローバルネットワークの2つの軸を併せ持つことで、元々良いものを持っている日本企業をさらに覚醒させるような価値を提供できると自負しております。

小倉 カーライルには、私が入社した頃から「和魂洋才」という言葉があります。言わば、日本とグローバルの「いいとこ取り」戦略です。当然グローバルの展開のお手伝いもできます。他方、日本のビジネスプラクティスを理解したジャパンチームが前面に出て、経営陣のパートナーとして並走しているということが大きな特徴かなと思います。

ーー サイズの大きなファンドを持たれていることから推察するに、やはりそれなりのサイズの投資案件にフォーカスすることになりますか?

小倉 クラシカルなバイアウトだけではなくて、様々な投資をしていこうと考えています。エクイティサイズではグロース投資だと50億円くらいの投資からという目線もありますし、平均すると100~200億円位のレンジが多いです。中堅の企業様規模から大きな企業様にも幅広くご対応できるレンジをカバーしております。一方で更に大きなサイズに関しても、アジアや米国といったシスターファンドと協働して、4桁億の案件規模もご相談に応対できると考えています。

“One Carlyle”の豊富なグローバル・リソースを十二分に活用する

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ーー 貴社の強みや特徴が活かされた成功事例をご紹介いただけますか。

小倉 シンプレクス社というシステム会社の案件をご紹介します。日本のテクノロジーは5~7年くらい遅れてのアメリカのトレンドを追いかけるという傾向があります。この案件では、米国チームにおける過去の類似案件の元経営陣を招き、今後の業界変化について意見交換を行った上で投資を決め、バリューアップを実現しました。まさにこれは、グローバルの知見を日本企業の価値向上に還元した事例です。

寺阪 製造業からはツバキ・ナカシマ社をご紹介します。こちらは世界最高級の球面加工技術を有するメーカーでしたが、グローバル展開に課題がありました。まず経営体制を見直し、外部からの引き抜き含めグローバルに耐えられるような経営基盤を作りあげると同時に、M&Aにより業容拡大を並行させ、最終的には世界シェアが6割を超える規模まで成長した時点で再上場しました。日本の製造業において同様に海外展開に悩みを持つ企業様は多いと思いますが、我々は今のリソースにカーライルのグローバルネットワークをブースター剤としてプラスアルファし、非公開化から再上場というパスを作っていきたいと考えています。

渡辺 ヘルスケアからはソラスト社をご紹介します。今では介護大手として有名な会社ですが、元は医療事務を中心にした会社で、株式市場からはあまり評価は高くありませんでした。非公開化して本業を強化しつつも、介護というこれから伸びるであろう新しいセグメントへの挑戦と、その足掛かりとしての買収を検討しました。しかし、この会社にはM&A経験がなかったため、買収の流れの理解、金融機関との関係作り、エグゼキューションやPMIの作法など、一からノウハウを一緒に積み上げていきました。結果として介護事業も大きな柱となり、再上場後の株式市場の評価も飛躍的に大きくなりました。新たな成長戦略を共に創出したという事例です。

コンシューマーからは名水美人ファクトリーというもやしの会社をご紹介します。オーナーの事業承継が大きなテーマで、外部人材の活用と内部からの人材育成含め、次世代の経営基盤を整えました。新機軸としてミックス野菜のパック事業を立ち上げると共に、自分たちの想いが消費者に届くようブランディングを再検討し、企業名、ミッションやビジョンの整理、パッケージの見直し、広告宣伝戦略などを一気通貫でサポートし、4年間で30%売上を伸ばしました。

ーー 御社の投資後、社名やブランドが変更になった事例がいくつかあります。どのような考えや戦略に基づいて実施されたのでしょうか。

小倉 カーブアウトのように母体だったコングロマリットの名前を使えなくなる場合だけでなく、事業承継など必ずしも名前を変える必要がない場合においても、体制変更や何かしらの変化の中で一度立ち止まり、「10年後に自分たちはどのような姿を目指し、それにふさわしい会社の名前は何なのか」を経営陣や従業員の方々と一緒に検討を重ねていきます。まさしく第二創業という位置付けで議論が起こるケースが多いです。会社名の変更ありきというよりも、もう一度、社会で果たすべきミッション、これから実現を目指すビジョンを見直して、世の中とコミュニケーションする方法として会社名やブランディングなどを変えた方がいい時がある、そう理解しております。

「我々がいなくなった世界」を想像することから投資は始まります

ーー グローバルファンドと謳っているファンド様は御社以外にいらっしゃいますが、カーライルだからこそ!という特徴を教えてください。

小倉 極めて特徴的だと考えているのは、我々は経営陣との緊密な連携や協働関係を非常に重要視するため、今後のビジネス展開や将来像について、案件の手前から相当の議論を重ね、同じメンバーが一気通貫でバリューアップをお手伝いするということです。何よりも我々の資本が抜けた後、その会社が永続的に成長していくために何が必要なのかという所から思考をスタートさせます。他社ファンドにはバリューアップチームを置くところもありますが、我々は必要な機能であれば時間がかかってもその投資先でしっかり体制を備えるべきだと考えます。

寺阪 小倉が申したのは、まさにオーナーなのかパートナーなのかという違いの表れです。あくまでも会社に能動性を持っていただき、我々は経営陣を支えるパートナーであるというスタンスです。その為、経営陣の採用についてもカーライルから派遣するのではなく、あくまでも会社主体で選んでもらいます。

我々の使命は「身の丈経営」を超えるお手伝いをすること

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ーー 今後の投資戦略や注力されている分野があれば教えてください。

渡辺 コンシューマーに関して、日本の市場だけではやはりそんなに大きくなっていかないので、グローバルで戦っていける事業のお手伝いをしていきたいと思っています。サポートの形としてはDXやブランディング・マーケティング強化もあるでしょうし、海外チャネルの提供や経営陣の強化も考えられます。ヘルスケアに関しては、生産性の向上や医療費の問題の解決につながるディスラクティブなテクノロジーや新しいサービス、アウトソーシングなどに関心があります。

小倉 TMTで関心があるのは、BtoB領域では日本経済の生産性向上に寄与するシステムやテクノロジーを有する会社、BtoCの領域ではデジタルによって今までにない顧客体験を提供するサービスに注力をしている会社です。必ずしも現状が伴わなくても、我々と手を組みビジネストランスフォーメーションをしていこうという会社様とご一緒したいと考えております。

寺阪 製造業でもグローバル展開は大きなテーマとなっており、追加買収や海外子会社の強化など、様々なグローバルの知見が活かせる分野だと思っています。課題は認識しているけれど、自前ではあと一歩足りないという時こそ、気軽に相談していただければと思っております。

渡辺 「身の丈経営」は日本企業の美点ともいえるんですが、グローバルに大きな市場があるにも拘らず進出に躊躇逡巡がある企業に、一歩を踏み出す勇気を与えることが僕らの使命だと思いますし、このプラットフォームの面白さではないかと思っています。

皆さまへのメッセージ
~いつかのために、今日お目にかかれたら幸せです

ーー 最後に、読者の方々にメッセージをいただけますでしょうか。

寺阪 ファンドというと、どこか無機質に感じられ、実際どういう志を持って関わってくるのか、外側からだと見えにくいと思います。世の中には様々なファンドがありますが、カーライルには、会社の成長を全力でサポートしたいというとても熱い志を持つメンバーが集まっております。すぐさま何かをコミットするのではなくとも、まずは我々の想いや思想に耳を貸していただけたら大変ありがたいです。もしかしたら何らかのヒントをお伝えできるかもしれませんし、リレーションを重ねながら、外部の力を借りたい時の引き出しとして温めていただければと思います。このような観点で、是非一度、お目にかかる機会があればと願っています。

以上

カーライル・ジャパン
https://www.carlyle.com/ja/carlyle-japan

記事監修

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