オリンピックに思うこと|欧州M&Aブログ(第20回)

シリーズ記事 

久しぶりに夏に一時帰国をしました。今年は長い梅雨空が続いていることもあり滞在中青空を見ることはほとんどありませんでしたが、蒸し上がるような暑さに日本を感じました。そしてそれ以上に、オリンピックを一年後に迎える日本のグローバル化を強く感じました。

新幹線に乗れば3分の1は外国人なのではと思うほどですし、タクシーに乗ればオリンピックを見据えた進化を感じることができます。クライアントの皆様とミーティングを持たせて頂くにつれ、常に世界に目を向けている日本企業の強さを感じます。海外で生活をすると、世界で大きなプレゼンスを持つ日本をとても誇らしく思います。

Tokyo01 1024x576

とはいうものの、印象論に過ぎないのですが、一方で日本もイギリスのように二極化しつつあると感じたのも事実です。Brexitが起きた(起きつつあるというのが正確な表現ですね)主な理由として、EUに属することで享受することができる「グローバル化」のメリットを感じない人たちが、国内回帰を強く志向したということがあります。

もちろん、日本市場は巨大な市場ですし、国内で成し遂げるべきことは無限にあるのも事実です。グローバル化すればよいというものではないのも事実です。ただ、「海外企業を買収しても、本当にコントロールできるのだろうか?」という漠然とした不安からクロスボーダーM&Aを躊躇されるケースを目の当たりにするに、日本人はもっともっと攻めてもよいのではと思います。

Digitalizationに代表されるように、世界はあまりに急速に変化しています。海外企業・ファンドが日本企業を買収するというケースも増えてきました。グローバル化を意識することは、好む、好まざるに関わらず不可避になっていきます。そこでオリンピックです。ロンドンオリンピックを開催したイギリスがBrexitを選択したということはさておき、オリンピックはまさに日本がグローバルに開かれた国であることをアピールする場であり、また、日本人がグローバルを感じる場になると思います。このような大きなイベントを通して、日本企業のマインドセットはきっと内より外に向かっていくと思います。

ロンドンオリンピックといえば、イギリスの新首相にボリス・ジョンソン氏が就任しました。ジョンソン氏は2008年から2016年までロンドン市長を勤め、就任期間中の2012年にはロンドンオリンピックに市長として大きく関わっています。フランス語やイタリア語も操る国際派として知られ、ロンドン市長時代には単一市場に加入することの恩恵について話をしていた同氏が、今では「英国版トランプ」と呼ばれ、Brexitを強行に推進しています。Brexitがグローバル化と相容れないとは言わないものの、ある程度は自国重視の内向き思考になると思われます。ジョンソン新首相のもと合意なき離脱となる可能性が高まっていると言われますが、16世紀頃には東インド会社に象徴されるように国際貿易を開始した、いわば“世界で最初にグローバル化した国”イギリスが、その良さを失わない形で妥結すればよいなと思います。

ところで私個人の話となりますが、最近グローバル化の恩恵(というと大袈裟ですが)を感じることが立て続けにありました。GCAは2008年に米国、2016年に欧州のM&Aアドバイザリーファームと経営統合をしましたが、私は欧州チームと協働する日々を過ごしています。今月ドイツ案件そしてフランス案件で、ドイツチーム、そしてフランスチームと案件推進方針で意見が対立することがありました。その対立の原因は、日本人である私が正しいと思う進め方が、ドイツ人そしてフランス人の現地人の常識と食い違っていたことにありました。

要するに、現地人でなければ分からないことは多々あるということです。何を当たり前なことをと思われるかもしれませんが、日本企業に関しては、「販売する製品はグローバルだが、会社自体はローカルのまま」という、現地人の声を活用していないケースのほうが多いように思います。そのようなケースでは、日本国内の売上が圧倒的に大きく、海外売上は小さい場合が通常です。「現地人でなければ分からないことは多々ある」という大前提は、意外に軽視されてしまっているかもしれません。

Tokyo OL01 1024x576

出典:https://www.japantimes.co.jp/

景気減速の話がよく出る今日この頃ですが、オリンピックに向けて景気も上向き、開催までの一年で数多くの素晴らしいクロスボーダーM&Aが成立すればいいなと心から思います。ところで、バケーション明けの9月からは欧州ではM&Aが活発になります。金融の量的緩和によるカネ余りでM&Aファイナンスのハードルが下がっていることに加え、株式市場の停滞を受けて年金基金が高利回りを求めPEファンドに投資をしていることもあり、PEファンドの買収余力はとても大きくなっています。ご存知の通り、PEファンドは意思決定がとてもクイックです。PEファンドを相手に高速なオークションプロセスを勝ち残るのは容易ではありません。

勝ち残るポイントは「プロセス前のアプローチ」です。GCAは、経験豊かな150名超の欧州現地プロフェッショナル及び欧州協業先のネットワークを活用し、候補先の調査・選定からドアノック、面談のアレンジ等、対象会社へのアプローチの段階からしっかりサポートさせて頂きます。下半期は皆様と一緒にどんどん攻めていくことができればと思います。何かございましたら、是非GCAメンバーにお声がけください!

記事監修

この記事を監修している弊社担当者です。