注目されるフランスM&A|欧州M&Aブログ(第12回)

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いよいよ欧州は3月末に夏時間に切り替わります。欧州の寒く暗い冬の終わりが近づいてきました。そして、それとシンクロするように、どうやらフランス経済も長い冬から抜け出そうとしているようです。

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先日、フランス人M&Aプロフェッショナルとフランスの景気やM&Aマーケットについて意見交換する機会がありました。彼は開口一番に「今のフランスはビジネス面について言えば過去10年間で最も良い雰囲気だ。M&Aマーケットもすごくアクティブだ」と興奮気味に話していました。

ビジネスが良い方向に向かっていることを国民が肌で感じるというのは、フランス人にとって久しぶり(というよりは忘れていた)感覚かもしれません。そんなフランスのポジティブな変化を見逃すまいと、アマゾンやGoogle、Facebookなど、米国企業はこぞってフランスへの投資を加速しています。

では日本企業は、この変化を感じ取ってフランスへの投資を加速させているのでしょうか?日本人にとってパリは最もポピュラーな観光地のひとつであり、フランス料理や高級ブランド、ワインなどが身近であることは言うまでもありません。一方でM&Aの話となると、「フランス企業の買収は労使の問題が大変だから」と入り口でネガティブな見方がなされるケースが多いように感じます。

しかし、その先入観は今すぐに取り払う必要があります。というのも、マクロン大統領は、フランス企業買収の最大のネックである厳格な労働法を、国会の審議を経ずして政令で法改正をするという離れ業にて、大きく改正したのです。

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出典:https://www.bbc.com/

マクロン氏が硬直的な労働市場にメスを入れた結果、企業の解雇手続きが簡略化され、その負担が軽減されました。一部の労働者はこの不利益変更に大いに反発しましたが、結果としてこの改革は魔法のように効果を現し、2017年第4四半期の民間部門の新規採用数は過去最高を達成、失業率も8.9%と2009年第1四半期以来の低水準になりました。

改革により日曜営業が可能になった百貨店は週末も賑わっています。アマゾンも正社員2000人採用を決定しました。高水準の失業率と財政赤字縮小のための増税で5年間にわたり低迷していた仏経済は、その長い冬から抜け出し、2017年はGDP2%成長という2011年以来の成長を達成したのです。

マクロン氏は、トランプの「アメリカ・ファースト」や、イギリスのEU離脱派の「イギリス第一主義」、直近のイタリア選挙でも躍進したポピュリズム政党も掲げた自国第一主義を真っ向から否定し、フランスの再生と同時にヨーロッパの安定を取り戻す道を探ろうとしています。

そんなマクロン氏は、フランス国民にとっても、イギリス離脱で揺れるEUにとっても頼もしく、カリスマ性に陰りがみえるドイツ・メルケル首相に代わって、「EUの顔」として国際舞台で大きな存在感を放っています。

マクロン氏はEU統合の深化を訴え、ユーロ圏の共通予算、共通財務相創設等の野心的な提案をしています。もしメルケル首相が絶頂期にあった「ドイツ1強時代」であれば、マクロン氏は保守的なドイツを説き伏せることは難しかったかもしれません。

しかし、今はフランスが息を吹き返し、「ドイツ・フランスのツートップ」体制になりつつあります。EUに長年疑心暗鬼だったイギリスは離脱予定です。実はEU深化は今が一番実現し易い状況なのかもしれません。

M&A件数で見れば、フランスはイギリスに次いで欧州で2番目に大きいM&Aマーケットです。コンシューマーリテールのみならず、ハイテク、インダストリアル、素材・化学を中心に数多くの案件があります。今後数年間は欧州の主役になるであろうフランス、是非注目してみてください!

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