Brexitから垣間見える「欧州人」のマインドセットに関する考察|欧州M&Aブログ(第11回)

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新年明けましておめでとうございます。本年もGCA一同、皆様に様々なご提案の機会を頂戴したく、昨年同様なにとぞよろしくお願い申し上げます。

さて、いよいよ2018年がスタート致しました。昨年はフランスやドイツでの選挙があり、また年末にはBrexitの第一段階の交渉がまとまる等、Brexit後の欧州の方向性を占う様々なイベントがありました。2018年第1回目のブログは、Brexitから垣間見える「欧州人(あえてこのような表現を使わせて頂きます)」のマインドセットについて考察してみたいと思います。

世界を見渡せば、アジア、南米、中東、アフリカ等、地域を括る呼称はいくつかありますが、それらは基本的には大きな経済圏の呼称であり、日本人が自分をアジア人と日々意識しないように、各地域の人が各地域人であることを日々意識するわけではありません。それに対し、欧州人は日々欧州を意識することがデフォルトとなっているように感じます。

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例えば英国においては、BrexitによりEUから主権を取り戻すと気勢を上る一方で、いかに“欧州の一国としての”英国がEU諸国と強力な関係を作ることができるかという議論が盛んになされています。また大陸欧州の2大国家であるドイツとフランスにおいては、国内の政治改革が日々報道される一方で、それぞれの国のトップがEUとはこうあるべきという明確なビジョンを持ち、それを公言しています。

その他の国についても大なり小なりあるものの同様で、欧州各国の人は自国のみならず欧州人であることを常に意識しているように感じます。Brexitの際にEU残留を希望する学生がBBCのインタビューの中で「私は英国人ではなくヨーロッパ人だ」とコメントしていましたが、これこそが日本人が「アジア」という言葉に対して感じる感覚より一段深い、欧州人としてのマインドセットかと思います。

この欧州人としてのマインドセットが醸成される理由は様々ありますが、最も大きい理由はやはり人口1億人未満の欧州各国はその隣国と(一部ないし全部が)同じ国だったという歴史的背景です。そして、それを数多の戦火の帰結としてのEUという壮大な平和プロジェクトが大きく深化させたと考えられます。

欧州人としてのマインドセットは日々のビジネスにも深く影響を及ぼしています。例えばマーケットの捉え方においては、自国のみではなく欧州全域ないし隣国含んだエリアがカバーすべきエリアだという発想になります。経営陣の構成については、ビジネスが自国に留まらないため、それは多国籍なものとなります。その結果として、欧州には、単に商品が世界中で販売されているという意味ではない、経営陣と従業員の意識・構成を含めた真の意味でグローバル企業が数多く存在するように感じます。こういった人材を獲得できるのも、欧州M&Aの大きな魅力のひとつといえるかと思います。

2017年は、欧州関連M&A案件の全世界に占める割合は29.6%*と3年連続拡大し、地域別では一番高い成長を達成しました。ユーロ危機やBrexitなどメガトン級の試練を跳ね返して成長する底堅い欧州に、2018年も大いに注目頂ければと思います!

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