逆方向から見るグローバル化のススメ|欧州M&Aブログ(第25回)
コロナという言葉が日常を支配しています。夏バテならぬコロナバテしていませんでしょうか?最近「Newノーマル」や「Withコロナ」といった言葉を聞きますが、コロナの勢いは未だ衰える兆しがなく、コロナがある生活が通常の生活になりつつあります(嫌ではありますが)。
前回のブログを書いた5月時点では、未曽有の事態ということもあり、世界全体が経済活動もストップさせて状況を静観するという状態でした。しかし7月に入り、多くの国は経済を持ち上げるべく出口戦略に軸足を移しています。出口戦略といってもコロナがなくなることはないのでまさにWithコロナなわけですが、誰も見たことのないNewノーマルの世の中において、企業はどのように成長戦略を描くべきでしょうか?誰にとっても新しい世界の成長戦略を描くことは容易ではありません。
1. Newノーマルにおけるキーワードは?
成長戦略を描くうえで、キーワードがあるとイメージが膨らみます。先日GCAでは全817社1,133名の経営層の方々に対して、「コロナショック対応戦略に関するアンケート」を実施させて頂いたのですが、多くの経営者の方々がキーワードに挙げたのは「デジタル化の加速」でした。在宅勤務やEcommerceの大幅増加からすれば、デジタル化をNewノーマルのキーワードにするのは自然な流れかと思います。欧州でも同じくデジタル化は最もホットなキーワードなのですが、それに加え、ESG(Environmental, Social & Governance)投資における“Environmental”も注目されているように感じます。これは、ロックダウンによって交通量が減少し空気がきれいになることで電気自動車への注目が高まったり、各国政府が公共交通機関の利用を控え自転車での移動を推奨したりしたことが理由です。
ここでポイントになるのは、デジタル化にせよ環境投資にせよ、Newノーマル下における新しいビジネス形態のなかで成長するものが、すべて日本発となるわけではないという点です。これは、例えばコロナ下で大きく伸びたZoom/Teams/SkypeなどのWeb会議システムやAmazon、Netflixを思い浮かべれば明らかです。
2. 日本売上を伸ばすためのグローバル化
ここで、M&Aの目的としてよく挙げられる「グローバル化」の意味について考えてみましょう。M&Aを実施する目的には、顧客・販路獲得、製品ラインアップの拡充、技術の獲得、製造拠点の獲得・・・などさまざまありますが、自社製品を海外で販売するための販路獲得、ないしは海外企業の製品・サービスを取り込んで海外売上高を拡大するためのM&Aが大半です。海外企業を買収するのは海外売上高を増やすために決まっているじゃないかというのはその通りかと思います。でも、「グローバル化=海外売上高拡大」と捉えるのは、日本から海外を見る一方向のグローバル化のように感じます。
では海外から日本を見る、逆方向のグローバル化というのはあるのでしょうか?言うまでもないことですが、日本は世界第三位の経済大国であり、巨大な市場を持っています。今後縮小するとはいえ、大きな市場であることは変わりありません。先ほど触れたWeb会議システム、Amazon、Netflixだけではなく、iPhoneや外車、ワインなど海外製品・サービスは市場に溢れています。あまりに多いので、もはやどれが海外のモノないしサービスと意識すらしないほどです。
これだけ海外のモノやサービスが市場に溢れているにもかかわらず、言い換えれば海外のものは広く日本市場で受け入れられるということが分かっているにもかかわらず、なぜかM&Aを考えるときには、海外企業買収によってその製品・サービスを日本に持ち込んで日本売上を大きく伸ばそうという、海外から日本を見る逆方向のグローバル化の視点は抜けがちです。
Web会議があっという間にスタンダードになったように、Newノーマル下では世界各国で今後新たなサービス・モノがどんどん出てくると思われます。デジタル化について、イギリスではビジネスサービスの分野、特にフィンテック関連で数多くのユニークな企業が産まれています。ドイツがモノづくりのデジタル化で先行しているのはご案内の通りです。環境関連では、北欧やスイスなどの小国も存在感を発揮しています。
日EU間のEPA(経済連携協定)によってフランス、イタリアそしてスペインの食品は今後どんどん身近になります。今年の下半期は、「欧州のモノ・サービスを日本に持ち込む」という視点でも案件ソーシングをしてみるのはいかがでしょうか?案件ソーシングにおいては情報のアンテナを高く上げ、関心領域の情報がどんどん入ってくる仕組みを作ることが重要です。是非GCAメンバーに「こんなアングルの案件情報を持ってきて欲しい」と伝えて頂き、自然と情報が入ってくるようにして頂ければと思います。
記事監修
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