コロナショックに思うこと ~シナジー至上主義への提言~|欧州M&Aブログ(第23回)

欧州ブログ 

隔月配信が3か月ぶり(そして今年最初)のブログとなりました。定期配信させて頂くべく、もう少し自分を厳しく躾ける必要がありそうです。

前回のブログを執筆したとき、次回こそはBrexitの結果が見えているはずだからテーマはBrexit特集だと決めていました。実際2020年1月31日にBrexitは成立し、英国の離脱は確定したのですが、本日時点では毎日のニュースはコロナウイルス一色、Brexitはマイナーなテーマとなっています。

コロナは既に生命、経済含むあらゆる面で甚大な影響を及ぼしていますが、そのショックがあまりに大きいこともあり、皮肉にもいろいろ考えるきっかけになっています。身近な例でいえば、「オフィスにいかなくても意外に仕事は回るんだ」といった気づきなどです。とはいえ、私がもっとも深く考えさせられたことは、ウイルス耐性ならぬリスク耐性を高めることの重要性です。前置きが長くなりましたが、今回のブログは、リスク耐性を高めるM&Aというテーマでいきたいと思います。

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1. 凄まじきコロナの破壊力=やはり世界はつながっている

米国のアメリカファースト、英国のBrexitなど、ここ数年グローバル化に疑問を呈し、保護主義に舵を切るケースを嫌というほど目にしてきました。しかし、コロナウイルスがあっという間に世界に広がった事実を目の当たりにするに、やはり世界は完全につながっていると強く感じます。これはもはや好き嫌いの問題ではなく、グローバル化という言葉自体不要なくらいに、世界はひとつになっていると言うべきでしょう。

コロナの破壊力はあまりに凄まじく、「こういったときこそ仕掛け時だ」と逆張り的なことを考える余裕もありません。今はじっと身を固めるしかないと思いますが、ずっと身を固めることはできず、いずれは動き出す必要があります。

2. コロナの出口はどのようになるか?

コロナは桜の季節までにきれいさっぱり無くなっていて欲しいですが、ウイルス数が徐々に減ることはあっても、どこかの時点でパッとゼロになることはないでしょう。一方で、経済活動はどこかの節目で急激に活発になるのではと思っています。今は近年記憶にないくらいに日々の生活が抑え込まれています。どこかのタイミングで吹っ切れたようにみんながバーッと飲みに行くようになるかもしれません。

経済が動き出したときには、M&Aマーケットも活発さを取り戻すに違いありません。出てくる案件のタイプとしては、コロナにより傷ついた会社の救済案件のようなものが通常より多く見られるかもしれません。ただ、どのような案件であっても、買い手視点で考えればコロナによる傷の深さ、そして将来の回復可能性の見通しを見極めるのは容易ではなく、その意味では不透明感を感じつつの案件検討になる可能性が高いと思われます。

3. コロナの教訓 ~リスク耐性を高める視点でのM&A~

企業買収を検討する際、シナジーを検討することは重要かつ当然のことです。皆様も社内で「シナジーはあるのか、1+1=3になるのか?」といった議論は頻繁にされているものと想像します。ここで、仮にシナジーが明確に見えない限りM&Aは検討しないという考え方を「シナジー至上主義」と呼びましょう。

コロナのようにグローバルレベルで甚大な影響を及ぼすものは正直お手上げではありますが、自然災害など、局地的にコロナレベルの影響が生じるイベントは今後も継続して発生するでしょう。

もちろん、いつどのようなリスクが生じるかは誰にも分からず、それに備えるというのは口で言うほど簡単ではありません。ただ、今回の件に鑑みるに、経営のリスク耐性をどのように高めるべきかについては、これを契機に大きなテーマとして検討する必要があると思います。

ここでM&Aの効果について考えてみるに、実はM&Aは「リスク耐性を高める」という視点で、最も有効な経営の打ち手の一つなのではないでしょうか?

活動地域、事業範囲、顧客カバレッジを拡大することは、経営のリスク耐性強化に寄与します(もちろん逆のケースが無いとは申しません)。例えば、日本で甚大な震災が発生し日本の業績が厳しくなった場合に、海外で相応に安定している事業があれば、ある程度穴埋めが可能です。すなわち、買収検討においてシナジーばかりに着目するシナジー至上主義からは脱却し、「この買収をすることで経営のリスク耐性は高まるのか」という視点でもバランスよく案件を評価することが、今後はより重要になってくるように思います。

最後に、2019年の欧州M&A総括をしたプレゼンテーションを作成致しましたので、お時間がある際には是非お目通し頂ければ幸いです。ご質問等ございましたら、お気楽にご連絡頂戴できればと存じます。

コロナのない春が来るとよいですね。

記事監修

この記事を監修している弊社担当者です。