インダストリー4.0と注目されるドイツ|欧州M&Aブログ(第5回)

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3月19日、世耕経済産業大臣は第四次産業革命に関する日独協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」に署名をしました。そして3月20日、安倍総理はドイツ・ハノーバーで開催されたCeBIT(国際情報通信技術見本市)でのメルケル首相との会見において、「日本とドイツには、高度な産業技術を有するなど様々な共通点があります。日本とドイツが協力をし、力強く世界をリードしていきたい」と日独連携を世界にアピールしました。さて、最近「第四次産業革命(インダストリー4.0)」という言葉をよく耳にしますが、それは具体的に何を意味し、なぜドイツが注目され、日本はどのような状況にあるのでしょうか?

インダストリー4.0とは?

インダストリー4.0については様々な説明がありますが、簡潔に言えば企業や工場レベルの効率化ではなく、インターネットにより業界自体の効率化を実現するというものです。例えば、スマート工場と言えるような生産性の高い工場は既にドイツに存在しますが、当該工場ないし企業中では無駄が取り除かれていても、受発注システムは顧客企業ごとにバラバラになっている等、業界全体ではまだまだムダが多いのが現状です。そこでドイツは、ある程度まで規格を共通化することで製造業全体の力を底上げしようと考えました。

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規格がある程度共通化され業界全体(メーカーのみならず顧客も含め)が効率的になれば、特定の汎用モデルのみではなくカスタムメイド品であっても大量生産できるようになり、また車などの製品改善においても、モデルチェンジすることなくスマホのようにソフトウェアをアップデートするだけで進化させることができるようになります。

とはいうものの、規格共通化のためにクリアすべき論点は山積です。ステークホルダー間で様々な利害が衝突することが予想され、コンセンサスを得るのは容易ではありません。また、実際に工場の設備や装置を入れ替えていくのも膨大な時間とコストが必要となります。事実として、2014年4月に発表されたインダストリー4.0のホワイトペーパー(白書)では2035年までの長いロードマップが示されています。

「何だ、今年や来年の話じゃなく、まだまだ先じゃないか」という点はその通りです。しかし、GDPの約25%を製造業に依存するドイツは、モノ作りでの敗北は国家の衰退と同義という強い危機感のもと、産官学連携でこの取り組み、つまり世界を変える準備を着々と進めています。

インダストリアル・インターネット?

インターネットを活用した製造業の進化は何もドイツの専売特許ではなく、アメリカも最近かなり力を入れています。例えばGEは「インダストリアル・インターネット」を提唱しており、これは第一段階として単なるハードウェアとしての機器販売、第二段階として製品の販売後も保守などで稼ぐ”サービス化”と進化してきた製造業を、第三段階としてデータ解析とソフトウェアの力で製品やサービスの顧客価値を飛躍的に高めることをゴールにしています。つまり、インダストリー4.0もインダストリアル・インターネットも、いわゆる「IoT(モノのインターネット)」を実現するという点において、その目指す方向は同じです。

IT分野では米国はドイツのはるか先を走っています。アマゾンやアップルが生み出したビジネスモデルはサービス・流通の産業構造を大きく変え、さらにその新たなビジネスモデルは更なる新たなビジネスを生み出すプラットフォームとなっています。サービスや流通ではなく製造業を見てみるに、アメリカでは製造業の全GDPに占める割合は12%程度であり(ドイツは24%)、これまでIoTを応用する分野として注目されていませんでした。しかし、近年では自動車産業を中心に製造業に大きなIT投資が実行されており、製造業におけるIoTにおいてもドイツではなくアメリカが覇権を握る可能性は十分にあります。

ドイツ企業の買収・資本提携

製造業自体の構造改革に関し、日本は他社とつながるメリットよりも磨き上げてきた生産ノウハウなどの情報流出リスクといったデメリットに注目するあまり、ドイツやアメリカのようなスピード感で改革が進んでいません。

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歴史が証明するように、産業革命は体で感じるスピードで起きるものではなく、じわりじわりと進んでいきます。しかし、それが起きた際には、それまでの覇権的な地位が一気に失われる破壊力を持っています。英国が「世界の工場」として復活し、米デトロイトが自動車産業の中心に返り咲くというのが想像し難しいように、IoTでモノ作りの仕組みが根本的に変わったとき、日本が今のモノ作り大国というポジションを一気に失う可能性は否定できません。極端な話として、製造業のスタンダードはドイツかアメリカが握り、日本メーカーは単なる汎用品の提供者となってしまう・・・という時代が来るかもしれません。

とはいうものの、第四次産業革命はもはや一つの国で実現できるものではなく、ボーダーレスで進んでいくと思われます。そのため、優れた要素技術を持つ日本企業がインダストリー4.0において重要な役割を果たす可能性は十分にあります。

しかしながら、要素技術を持つのみでは産業革命に関わることはできません。そこで産業革命に関わる手段のひとつとして、インダストリー4.0の中心的役割を果たすドイツ企業と組む、もしくは買収することで自社をインダストリー4.0の中心に置くということが考えられます。

あまり知られていないのですが、実はドイツにはAGIC Capital、PINOVA Capital、High-Tech Gruenderfonds、DIGITAL+ Partnersなど、ハイテク企業のみに投資するプライベートエクイティファンドが多数存在します。このようなファンドが保有するハイテク企業は、潜在的な買収ターゲットとして検討すべき企業群といえます。また、ドイツには優れた技術を有する中小の非公開企業が多数存在することでも有名です。そのような企業群からターゲットをピックアップすることも重要となります。

GCAは、テクノロジー分野を中心にカバーするチームをフランクフルトに置き、また、優れた技術を持つ非公開企業に多く投資しているファミリーオフィス(倒産の危機に瀕していたBMWを救済したことで知られるクヴァント家のような資産家ファミリー)に強いアクセスを持つチームをミュンヘンに置いています。ドイツ企業のM&Aについてご質問等ございましたら、是非お気軽にご連絡ください。

記事監修

この記事を監修している弊社担当者です。

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