イスラエルのM&A|欧州M&Aブログ(第2回)
7月末にGCA株式会社は欧州Altium社と経営統合し、日米欧亜10ヶ国に14拠点を有するグローバルM&Aアドバイザリーファームとして新たなスタートを切りました。欧州におけるプラットフォームの確立を機に、本ブログを通じて最新の欧州M&A事情をお伝えして参ります。
イスラエルのM&A環境について
「中東のシリコンバレー」として世界中が注目するイスラエル。弊社イスラエルオフィス代表のGabriel Perelは、「イスラエルには好奇心と創造性に溢れたカルチャー、生来の起業家精神、失敗に寛容でチャレンジを奨励する風土がある」と熱く語ります。オラクル、グーグル、アップル、フェイスブック、シンガポールテレコム、アリババ、バイドゥなど、世界の名立たるテクノロジー企業は既に大きな投資を実行しています。今回は、欧州ブログといいつつも欧州ではありませんが、そんなイスラエルの魅力とM&A環境について取り上げます。
イスラエルは、人口約800万人、面積は日本の四国程度(そのほとんどが砂漠)で資源に乏しいため、過去20年にわたり政府主導でハイテク産業振興に軸足を置いてきました。政府の戦略に乗る形で、人口の50.4%が30歳以下というフレッシュな人材が持ち前の企業家精神を活かして次から次へと起業しています。テクノロジー発信地として現在約1400社のスタートアップ企業と約300社以上の多国籍企業、大手テクノロジー会社、主要ベンチャーキャピタルが集結しており、その技術力、人材、製品を求める欧米および中国企業によるM&Aが活発化しています。高度な写真補正機能を持つGroupshotやGPSシステムのWazeなど、皆様が聞いたことのあるアプリも実はイスラエル発です。本場米国のシリコンバレーにはないユニークな点として、兵役義務期間に習得した技術知識を活かしての起業というパターンが多く見られるのもイスラエルの特徴です。
中国企業はイスラエルに猛烈アプローチ
中国は米国と並び、週1件程度のペースでイスラエルのスタートアップ企業や製造業を買収しており、かつてないほどイスラエル投資に傾倒しています。これまでの代表的な大型M&A案件としては、2015年の中国光明食品集団(ブライトフード)によるイスラエル最大乳製品メーカーTnuvaの買収(約20億ドル約2,400億円)、今年の中国企業コンソーシアムによるオンラインゲーム会社 Playtikaの買収 (約44億ドル、約4,570億円)などありますが、技術力を求めてテクノロジーから農業まで、幅広い分野で数多くの買収を実行しています。
日本企業の中東のシリコンバレー攻略はこれから?
今年1月にはソニーによるイスラエル半導体企業Altair Semiconductorの買収(212百万米ドル(約250億円)など見られましたが、他の先進国と比較してイスラエルに拠点を置く企業は圧倒的に少なく、日本企業は後れを取っています。一方で、2014 年 7 月に経済産業省(METI)とイスラエル経済省(MOE)が日本とイスラエルの産業 R&D 協力支援の節目となる協力覚書(MOC)を締結し、2015年12月には日・イスラエル投資協定合意が締結され、二国間の関係はこれまでにないほどに深化しています。具体的には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主導による日本・イスラエル国際研究開発プログラムなどがあり、両国企業の共同研究開発、プロジェクトの公募、審査、助成など、支援の実施方法が具体的に取り決められました。
弊社のGabriel Perelは、「イスラエルでのM&Aを成功させるためには、まずイスラエルに来て、その目で多くのスタートアップ企業を見てほしい」と強調します。百聞は一見にしかずと言いますが、まずはその独特のコミュニティに飛び込まないことには始まりません。中東のシリコンバレー攻略のためには、是非フットワーク軽く現地で見聞を広げてください。もちろん、現地では弊社イスラエルチームとのディスカッションの場を設けさせて頂ければ光栄です。
記事監修
この記事を監修している弊社担当者です。