日本型投資で「いい会社」を共につくる

ファンドインタビュー 

インテグラル株式会社
パートナー 山崎 壯

2000年代前半よりプライベート・エクイティ投資に一貫して従事。投資実務に加え、投資先企業の経営陣に参画しての常駐での企業価値向上、機関投資家からのファンドレイズについても豊富な経験を持つ。産業再生機構にて、中堅製造業等の事業再生案件を担当。デューデリジェンス、事業再生計画の策定、投資の実行、投資先へのハンズオンでの経営支援、投資のEXIT実行等の一連の業務を担当した。産業再生機構以前は、デロイトトーマツコンサルティング(現・アビームコンサルティング)戦略ビジネス事業部等にて、主に自動車/小売/専門商社/銀行のコスト削減、在庫削減、業務プロセス改善等の業務改革プロジェクトを担当した。

パートナー 早瀬 真紀子

国内大手銀行のM&Aアドバイザリーのクロスボーダーチームにて、重機・ハイテク業界の国内外のクライアントの子会社売却、事業部買収、会社再生などを手がけた。その後、米系コンサルティング会社の国内・海外オフィスで消費財、金融、ハイテク、自動車業界の戦略立案、新規事業開発、業務効率化プロジェクトなどに携わる。創業後まもないインテグラルに参画。

ディレクター 池田 篤穗

2008年より新日本監査法人において、主に大手物流グループ、自動車・建機部品メーカー及び商社等に対する法定監査業務・内部統制監査業務に従事するとともに、管理体制強化や予算管理・原価計算の精緻化等のアドバイザリー業務を担当。

ダイバーシティ溢れる日本発のプロフェッショナルチーム

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(写真左から池田篤穗氏、山崎壯氏、早瀬真紀子氏)

ーー 皆さまの自己紹介と貴社に参画された経緯についてお聞かせください。

山崎 2009年7月にインテグラルに入社しました。新卒ではデロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)でBPRなどに従事し、2004年に産業再生機構に転職しました。地方の中小企業さんに再生のための投資などを進めていましたが、2007年に再生機構は解散し、その後ハーバード・ビジネス・スクールに留学しました。機構で経験した「投資をして企業の価値を上げる」という仕事に非常にやりがいを感じていたため、ビジネススクール卒業後にそのような業界や外資系ファンドなどの門を叩きましたが、リーマンショックと重なり採用が凍結になってしまいました。そんな折、ちょうど1号ファンドの立ち上げ最中だったインテグラルの紹介を受けました。現パートナーの山本や佐山はユニゾン・キャピタルやGCAといったM&A関連で非常に有名でしたし、辺見の講演も聞いたことがあり知っていたので、このメンバーだったら面白そうだなと思い、参画しました。

早瀬 インテグラルの創業直後の2007年12月に入社しました。新卒ではさくら銀行(現三井住友銀行)での支店配属から始まり、その後M&A関連の部署に異動した際の直属の上司が、現パートナーの山本でした。彼は一年足らずでユニゾン・キャピタルへ移ってしまいましたが、そのときの縁が今日に繋がっています。私は元々、事業会社で働きたかったため、銀行でM&Aに従事していた時も、PMIなどディールの後はどうなっているのだろうという事にとても興味がありました。私も山崎と同じくハーバードへ留学し、その後マッキンゼーで2年ほど働いた後、インテグラルに参画しました。やっと今、投資先の様々な事業会社と一緒に仕事ができるようになり、やりたかったことができていて、14年近くになります。

池田 前職は新日本監査法人で、会計監査とIPOのアドバイザリー等を担当しておりました。当時から事業再生に興味を持っていたのですが、その前に一度MBAに行ってみたいと思いスペインへ留学しました。そこでコンサルティング会社と投資銀行とインテグラルとでインターンシップに参加しました。その中でもインテグラルは当時、スカイマークに投資した直後で熱気があり、とても充実した時間を過ごしました。投資先の事業に非常に近く、経営の第一線でやれるなと感じました。また、他と比べると、インテグラルでの仕事は本当に重要な局面にいるという臨場感があり、自分がグリップしている感覚が強くあったので、ここでチャレンジしてみたいなと思い入社を決めました。

ーー 現状運営されているファンドの概要とチーム体制についてご説明ください。

山崎 日系の日本に特化した投資のファンドとしては最大級となる、1,000億円を超えている数少ないファンドの一つです。大きめの案件にも対応することができますし、案件規模が小さくても成長力の高い企業に投資させていただいていますので、ストライクゾーンは広いかと思います。

陣容は拡大してきており、パートナーが8名、ディレクター、ヴァイスプレジデント、そして投資プロフェッショナルが続きます。加えて、公認会計士資格を持ってファンドのアドミニストレーションを執りつつ投資先企業の管理部門や経理をサポートする部隊もあり、総勢60名強となっています。最近は毎月のように入社があります。

ーー 色々なキャリアの方がいらっしゃいますね。多様性なども意識して人員構築されているのですか。

山崎 いわゆる金太郎飴的なプロフェッショナルファーム出身者だけではなく、事業会社や官庁出身者、さらには元サッカー選手などもおります。また、パートナーの二井矢と早瀬も含めて、いわゆるダイバーシティの観点からも、女性のシニアマネジメントもいる数少ないファンドの一つかなと思います。

インテグラル流を支える「i-Engine」と「ハイブリッド型投資」

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ーー 御社で大事にされている理念や価値観を教えてください。

山崎 日本の独立系ファンドであり、創業パートナーの4人含む8名のパートナーと職員で自社株をすべて持っております。基本的に8人で全ての意思決定ができるため、自由に経営できる体制になっていると言えます。

社名の由来にもなっていますが、インテグラルには「積分」や「積み重ねる」という意味があり、「ハートのある信頼関係」と「最高の英知」を積み重ねていきたいという願いを込めております。投資先の企業様の信頼を得て、それを積み重ねていくことで「信頼される資本家 Trusted Investor」になりたいという想いを経営理念として持っております。

当社のスタイルは日本型バイアウト、日本型投資です。私たちが掲げる日本型の目標は、「共にいい会社を作る」ということです。投資先企業の経営陣や社員の方と一緒にいい会社を作った結果として、当社に出資約束をいただいている投資家様にリターンを還元できる、ということをコンセプトとしています。例えば、個別の案件では必ずしも最大のリターンを目指していません。1円でも高いエグジットを目指すことにフォーカスするのではなく、結果として良い形で投資先企業を送り出したいと考えています。投資先企業が嫌がるようなエグジットはしないと明確に言っておりますので、例えば某国の企業には売却されたくないというご希望が投資先にある場合、たとえそちらの選択の方がリターンは出るかもしれない場合でも、お約束は守ります。このように、「投資先が望むゴールに向けて同じ目線に立ち全力でコミットする姿勢」を投資先企業や業界の方などにご理解いただき、その結果としてまた良い案件が巡って来るという形で事業が回っております。

具体的な施策として行っているのは「i-Engine」という事業アプローチと、超長期の投資のアプローチである「ハイブリット型投資」です。

「i-Engine」というのは、投資家と働く人という二分的なスタンスではなく、株主、経営者、従業員が三位一体となり、共に設定した長期的なゴールに向かって積み重ねていくという考え方をベースに、必要に応じて当社からも人材を派遣し、投資先で深く長く一緒に働くというアプローチです。管理部門だけではなく、経営企画や事業開発など、事業にどっぷり漬り、お客様に同行して他社と交渉するような機会もあります。

「ハイブリッド型投資」というのは、投資家から集めたファンド資金に加え、自己資金を使った当社独自の投資モデルです。当社のバランスシートを使って投資させていただくということで、大きいポーションではないのですが、安定的に残ってほしいというご希望があれば、長期的に投資を継続させていただくこともできます。

いい会社をつくるために、他のファンドとは違う観点を持ち、自分たちが骨身を惜しまず働きますよ、エグジットまでの短期目線ではなく、長期的な関係という選択もできますよということを仕組みとして持ち、社会インフラとして信頼を勝ち得ていきたいという想いがあります。

ご要望にお応えして、ハンズオン型の経営支援「i- Engine」で事業価値を向上させる

ーー 実際の投資先における「i-Engine」 機能を用いた経営支援の事例があればご紹介ください

早瀬 「i-Engine」というのは決して押し付けではなく、投資先企業にとって必要なことをサポートしましょうというスタンスです。ですので、例えばAPAMAN株式会社のように、常駐者を派遣しなかったケースももちろんあります。現在サポートしている日東エフシーの場合は、「必要なこと」が代表のポジションでした。常駐する場合は1名を派遣することが多いのですが、日東エフシーでは私ともう1名の2名で常駐しています。投資のテーマは「事業承継と事業の再成長」で、鋭意取り組んでいるのは「会社のカルチャーをもっとチャレンジする姿勢に変えていく」ことです。300人ほどの全社員にインタビューをさせてもらい、いま何が面白いか、どこを変えどこは守りたいかという現場の声を拾って、経営陣で議論しました。攻めの組織に変えようと、2年目にはマーケティング専任チームを作るなど色々と進めています。

日東エフシーへの投資直後は、「ファンドが初めて肥料業界に来た」と言われ、お取引先が戦々恐々とされていたので、社内の改善活動など内科的なことに集中して支援しました。お取引先や競合他社さんからも「肥料事業をちゃんとやろうとしている」と認識いただき、日東エフシーの社員も自信を持って色々なことに挑戦できるようになってきたかなと感じています。

今、農業業界にはベンチャーの参入も多く、肥料以外にも様々な農業資材が出てきています。日東エフシーは昔ながらの肥料で戦ってきましたが、今はドローン向けの肥料や新しい資材なども研究開発してみよう、農家さんに積極的に紹介していこうといった発想が社内に生まれていて、徐々に変わってきています。カルチャーというものは、5年後ぐらいに振り返って、変わって良かったね、と気づくものだと思います。近い未来に日東エフシーの社員にそういう気持ちを持ってもらえたら嬉しいです。

「i- Engine」とは怖れず濃密な時間を積み重ねること

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ーー ファンドから人を長期に派遣することに対し、乗っ取られるとか、人を送り込まれるというように、構えられる会社さんがまだ多いと思います。当初はディフェンシブであったけれども、後に変化があったエピソードがあればお聞かせください。

早瀬 我々も最初にディフェンシブな反応があるということは理解しているため、当社では、人として魅力的な人、新しい環境にも溶け込める人を採用し育てて派遣しています。それでも、株主が人を派遣するということに精神的ストレスを感じる方はいらっしゃるので、事業については投資先の方々が大先輩であって、たまたまこの投資期間にご縁があって我々はご一緒しているだけであること、投資先企業をお手伝いする立場であることを社内で共有しています。謙虚な心を忘れない人が当社には揃っていると考えています。

池田 経営陣は課題を抱えていらっしゃいます。必要な人材を社内異動や採用で充てるのでは6カ月程度かかってしまうため、インテグラルのメンバーを活用したいというニーズが発せられます。その際に常駐者を派遣します。上手く活用できて経営陣からもっと長くいて欲しいと希望されることも多く、3年以上もご一緒することもあります。インテグラルから人を受け入れて良かったと思ってもらえる点は、やはり他の事業会社や業界を知っているということや、MBA的な知見、すなわちフレームワークや物事の整理の仕方を知っている、課題の発見が早いということかと思います。埋もれた問題をきちんと課題として経営陣に提示ができて、経営課題としてソリューションへ繋げていく、そこが一番「インテグラルから来た人は役に立つね」と思ってもらえている点だと思いますし、問題を解決してくれる人たちだと分かれば、ディフェンシブな姿勢は和らいでいきます。

また、やはり人と人なので、毎日一緒に過ごすというのも結構大事なことだと思っています。一緒に考えて、一緒に事業を進める中で、日常の中に課題解決の仕組みが入っていき、お互いに成長できます。

一番の財産として我々が投資先に残せるものは、投資先で育った人であり、彼らがその後も自分たちで課題解決を続けながら会社がよくなっていきます。そして、我々も学んだことをインテグラルに持ち帰り、色々な切り口や経験知を身につけて次の投資検討に活かしていくことができていると思います。

山崎 私たちのスタイルは、これしてあれしてというような指示めいた言葉は全然言わないんです。投資先の望むことを手伝うパートナーのような形で使っていただいて、信頼関係を築けた段階で初めて、変えていくべき改革のポイントを柔らかくお伝えしていくというのが弊社の特徴的なスタイルです。

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ーー 近年、御社の投資先でIPOをされる会社がとても多いという理解をしております。今ご説明いただいたようなスタイルで会社が良くなり、IPOを成し遂げたというケースをご紹介いただけますか。

池田 ダイレクトマーケティングミックスという会社に2017年の9月から常駐をしています。投資させていただいた直後から、上場したいという意向を伺いましたが、以前支援していたファンド傘下では、IPOに至らなかった過去がありました。そこで再度当社で検討し、難所も多くありましたが、3年ぐらいかけて上場準備をしてきました。会社のカルチャーから改善を行ったり、労務管理を整えたり、一つ一つ会社の制度改革を行っていきました。今では東証一部に上場を果たし、上場企業としての責任を社長も役員陣も感じながら経営してくれています。上場するという共通の目標が持てたことで、改革も力強く進みました。

「ハイブリッド型投資」で投資先と同じ船に乗る

ーー ハイブリッド投資についてお伺いします。ファンド資金がある一方で自己資金もあるとのことですが、どのように使い分けをされているのでしょうか。

山崎 ハイブリッド投資は当社が日本型バイアウトとして提供できる特徴的な価値の一つで、投資先企業、特に経営陣の皆さまからリクエストをいただいて実行するというのが基本的な流れです。経営者から見たらプリンシパル投資は自己資金なので、仲間としてコミットしてくれて、本当にこの会社に懸けてくれているんだと感じていただけます。経営者自身は自分の会社に懸けていますので、名実ともに同じ船に乗るという意味合いがあると思います。ファンドは最終的には上場後に保有株式を全て売却しなければならないのですが、プリンシパル投資であれば、長期的に持ち続けることができます。例えば上場したQBハウスでは、ファンドとしての持分は全部売却が終わっているものの、プリンシパル投資の部分は継続して保有しています。安定株主として長期に亘って会社をサポートできる株主が求められる場合には、プリンシパル投資部分の資金を増やして欲しいとリクエスト頂くこともあります。

間口は広く、キラリと光る企業の成長を支援する

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ーー 今後、注力していきたいセクターや案件のタイプなどの戦略を御聞かせください。

山崎 弊社ではテーマを絞って投資先を決めるわけではなく、幅広くカバーしています。事業承継もありますし、もっと成長していきたい企業においては事業資金のニーズ、一度非公開化して事業の構造改革をしたいというニーズもあります。カーブアウトにおいては、大企業からすればコアに集中するためのノンコア部門の売却のニーズ、独立する企業側からすると、独立・起業・専業として成長していきたいというニーズがあります。例えばサンデン・リテールシステムというサンデンホールディングスからのカーブアウト案件はこれに該当しますし、足元でも同様の案件のパイプラインを多く抱えています。また、先ほど池田から説明させて頂いたダイレクトマーケティングミックスのように、非常にユニークで強みのあるビジネスモデルで進化し続けている企業に継続して資金を投じるということはテーマとしてあります。

早瀬 キラリと光る企業にも注目しています。

山崎 そうですね。後は非公開化MBO、これもすごく大きなテーマとしてあって、1年に一度は投資しています。過去にはアデランスや豆蔵K2TOPホールディングス、今年はオリバーの非公開化をサポートさせていただきました。

皆さまへのメッセージ
~相性のよいファンド探しの秘訣は会って話すことです

ーー 最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

山崎 私自身、色々なファンドの方とも会う機会もあり、過去に採用面接で他のファンドを受けたこともありますが、本当にそれぞれ全然違うと感じます。そこにいる人の価値観、雰囲気、スタイルや話し方、そういうことを含めて各々に個性がありますので、是非、直接お会いして、色んなファンドと交流されることをおすすめしたいなと思います。そうすると自分たちにとって合うか合わないか、肌で感じることができると思います。

池田 当社のメンバーは経営理念を大事にしていて、投資先との信頼関係を考えながら仕事をしているメンバーが多いように思います。

山崎 確かにそうですね。例えばチームでプレゼンテーションをして、その後、山本や佐山を紹介したりするんですけど、言っていることがみんな同じで一貫性があるということを、とても評価いただきます。

早瀬 会社が今後こういうことをやりたいのだけれども、社内の人では間に合わないという時に、気軽に声を掛けていただきたいと思っています。株とセットになるところがハードルになるかもしれませんが、逆に株がセットだからこそ、我々も本当に真剣にご一緒できるので、そういう観点も是非持っていただければと思います。

以上

インテグラル株式会社
https://www.integralkk.com/

記事監修

この記事を監修している弊社担当者です。